fresh
Fresh / Sly & The Family Stone
 Epic Sony '91 

『Fresh』は既にレヴュー済みだが、ここで取り上げるのは例の別ミックス盤。
91年の日本初CD化の際に、どういうワケかオリジナルとは異なるマスターが使用される事態に。マスターが違うことをエピック・ソニー側は誰も気付かなかったのだろうかと思ってしまうが(あるいは、確信犯だったのかも)、こんなことが起こり得るほど、当時の日本ではスライはまともに聴かれていなかったと言えるのかもしれない。
個人的には、92年にこの別ミックス盤を聴いたのが『Fresh』初体験。それ以前に『暴動』は聴いていたものの、なかなか理解できずにいたのだが、この『Fresh』は相当に衝撃を受け、聴いて一発で虜になってしまった。その数年後に『Fresh』のオリジナルのアナログ盤を手に入れたのだが、それまで慣れ親しんできたものとかなり違う内容にひどくショックを受けた。当時はまったく事情を知らなかったので、一体何が起こっているのか理解できず混乱し、それから暫くは『Fresh』を聴けなかった。
この音源がどういう位置付けのものかはよく分からないが、おそらくこの別ミックス音源が初期ヴァージョン。ジェフ・カリス著の『スライ&ザ・ファミリー・ストーンの伝説 人生はサーカス』には、エンジニアのトム・フライの話として、既に録音を終えていたアルバムのテイクにスライが満足できず、改めて録り直したことが記述されている。そのスライが満足しなかったのがこの別ミックスで、録り直したテイクが世に出た正規ヴァージョンなのだろう。
ここで気になるのが、アルバム冒頭を飾る「In Time」。この曲のみが、正規盤、別ミックス盤ともに同じテイク。ここからは想像だが、おそらくアルバムの最後に録音されたのが「In Time」で、この曲にマジックを見出したスライが、他の収録曲も「In Time」と同じ方向性で録り直したのではないだろうか。正規盤の収録曲中でも図抜けた存在の「In Time」ではあるが、この別ミックス盤の中ではその特異性がより際立っているように思える。
「In Time」以外の曲を正規盤と別ミックス盤とで比較すると、モコモコとして濁ったサウンドの正規盤に対して、別ミックス盤はよりスッキリと整理された感じ。ホーン・セクションやコーラスが奥に引っ込んで、ドラムスやリード・ヴォーカルが強調されたミックス。ベースの輪郭はよりクリアな感じだが、スライのヴォーカルは何かフィルターを通したように響き、やや生々しさに欠けているようにも思う。単にミックス違いというだけでなく、多くの曲でアレンジが異なっていて、曲によってはほとんど別の曲になっているものもあったりする。
やはり正規盤の方が断然良いのだけれど、非常に興味深い音源だし、スライのファンであれば面白く聴けることは間違いない。2007年のリマスター盤以降、この別ミックス盤から「Let Me Have It All」「Frisky」「Skin I'm In」「Keep On Dancin'」「Babies Makin' Babies」の5曲がボーナス・トラックとして追加収録されている。