elixer
Elixer / Bria Valente
 NPG '09 

当初アメリカではスーパー・マーケット・チェーン、ターゲットでの独占販売となった『Lotusflow3r』『Mplsound』『Elixer』の3枚セット。3枚組の1個の作品というよりは、それぞれ方向性の異なる独立した3枚のアルバムをパッケージして抱き合わせ販売したような感じ。
本作『Elixer』の主役、ブリア・ヴァレンティは、インド系のシンガーとのことで、いかにもプリンスが好みそうな雰囲気。せっかくのデビュー作が3枚抱き合わせのうちの1枚っていうのも何だか可哀想な気もするが、テイマーの『Milk & Honey』のようにお蔵入りにならなかっただけマシか。結局ブリアも、プリンスとの関係はこの1枚のみで終わり、以降の音楽活動については情報がない。
スムーズ&アーバンなR&B指向の本作は、もちろん作曲・演奏・プロデュースはプリンスで、熟練の業を存分に注ぎ込んだアーバン・コンテンポラリー・サウンドのクオリティは頗る高く、殿下はシャーデーみたいなアルバムを作りたかったんだろうなぁと思わせる。アンニュイ系のブリアの歌は正直どうってことないが、プリンスのクールなサウンドを邪魔することなく、全体のパーツのひとつとしては上手くハマっている。
激スムーズな「Here Eye Come」は、プリンスらしいギターも効いたクワイエット・ストーム。 ジャジーで小粋なR&Bナンバー「All This Love」、ややアンビエントかつオリエンタルなムードの「Home」、アル・グリーン「I'm Glad You’re Mine」を参照したようなドラムスが印象的なミドル「Something U Already Know」、エレクトロなディスコティーク「2nite」、『Milk & Honey』からの流用となった哀愁ミディアム「Kept Woman」、幻想的なスロウ「Immersion」、プリンスとのデュエットとなる「Elixer」など、秋の夜長に聴きたい良質R&Bアルバム。