neither fish nor flesh
Neither Fish Nor Flesh / Terence Trent D'arby
 CBS '89 

世界的なヒットを記録したデビュー作『Introducing The Hardline Acording To Terence Trent D'arby』に続いてリリースした、テレンス・トレント・ダービーの2ndアルバム『Neither Fish Nor Flesh』。
前作で音楽界にセンセーションを巻き起こし、一躍ポスト・プリンスの最右翼に躍り出たテレンスだったが、本作はセールス面では不振。前作でもソウルやファンクだけに留まらない音楽性を披露していたが、本作では更にヴァーサタイルに拡張。前作にあったキャッチーさが減退し、一聴して難解な作風が一般には受け入れられず、また己の才能に対する絶対的な自信が度々の舌禍を招いたこともあり、前作を支持した層の多くが離れていってしまった。
失敗作の烙印を押されてしまった本作だが、しかし内容は圧倒的に素晴らしい。この時点で早くもプリンスに肩を並べるところまで来てしまったのではないか、と当時本作を繰り返し聴きつつ、そう思っていた。プリンスが『Parade』や『Sign Of The Times』で行き着いた境地に、キャリア2作目で到達してしまったかに思えたテレンスの才能に末恐ろしささえ感じていたのだが、まさかその後、後発のレニー・クラヴィッツにそのポジションを取って代わられようとは、その当時は思いもしなかった。
歪んだギターのフィードバック音に語りを乗せるイントロダクション「Declaration:Neither Fish Nor Flesh」からアルバムはスタート。ハープの音色だけをバックに歌う「I Have Faith In These Desolate Times」は終盤、プリンスの「New Position」を彷彿とさせるパーカッシヴな骨格ファンクへと変貌。シタールとストリングスが揺蕩う、雄大な雰囲気を醸すサイケデリックな「It Feels So Good To Love Someone Like You」、続く「To Know Someone Deeply Is To Know Someone Softly」は瑞々しいメロディを持つ柔らかなミディアム。アルバム冒頭からここまで、標準的なR&B/ソウル・ミュージックからは大きくかけ離れた楽曲と野心的な展開は、聴き手をふるいにかけるかのよう。
「I'll Be Alright」で、ようやくオーセンティックなソウル・ナンバーが出てくるが、テレンスのソウルフルなヴォーカルが映えるこの曲はなかなかカッコいい。ポップなメロディの「Billy Don't Fall」、サイケなロック・ナンバー「This Side Of Love」、「Attracted To You」は『Sign Of The Times』あたりのプリンスを連想させる(特に終盤のホーン・アレンジとか)。
目まぐるしく音が駆け巡るサイケデリックでファンキーなダンス・ナンバー「Roly Poly」、「Dance Little Sister」タイプのJB調ファンキー・ソウル「You Will Pay Tomorrow」、声を振り絞って歌うソウル・バラード「I Don't Want To Bring Your Gods Down」、ラストは不思議な余韻を残すアカペラ「...And I Need To Be With Someone Tonight」。今改めて聴いても、まったく色褪せていないタイムレスな大傑作。