listen to the voices
Listen To The Voices Sly Stone In The Studio 1965-70
 Ace '10 

本作は、スライ関連の60年後半を中心としたシングルや未発表曲をコンパイルした編集盤。
このうち、ストーン・フラワー・レーベルのシングル曲は、『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』という決定版があるが、ソレが出るまでは、ストーン・フラワーの音源がまとまった形で聴けたのは本作のみだったと思う。
そのストーン・フラワーのシングル群の中でも、リトル・シスターのシングル3曲はやはり図抜けている。特に、「Thank You」の次を感じさせるファミリー・ストーンの演奏が最高な「You're The One」、プレ『暴動』なムードの宅録リズム・ボックス・ファンク「Stanga」は凄い。「Stanga」のシングルB面だった「Somebody's Watching You」は、『I'm Just Like You』で日の目を見た、ファミリー・ストーンによるあのフルバンド・ヴァージョンを聴いてしまうと、このリズム・ボックス使いのシングル・ヴァージョンはやや物足りなく感じてしまうが、不穏に蠢くクール・ファンクは『暴動』にそのまま直結する音で興味深い。「You're The One」同様にファミリー・ストーンが鉄壁のバックを付けたジョー・ヒックス「I'm Going Home」「Home Sweet Home」も余裕のカッコよさ。この2曲は69年のシングルだが、同じジョー・ヒックスでも70年の「Life & Death In G & A」や、6IXの「I'm Just Like You」「Dynamite」は、グルーヴィーにウネるリズム・ボックス・ファンク。リトル・シスターも含め、やはりこの辺りのストーン・フラワー音源が「Thank You」と『暴動』を繋ぐミッシング・リンク。
スライ&ザ・ファミリー・ストーン名義による未発表曲「Man Does Not Live」は重厚なようでヨレたムードのスローで、調子っぱずれのホーンもスライらしさを感じる。『A Whole New Thing』収録の「Turn Me Loose」の元ネタとなったオーティス・レディングのカバー「I Can't Take You Loose」は、初期のステージでは必ず演奏していたスライお気に入りの曲で、『Live At The Fillmore East』でも4セット中3セットで「Turn Me Loose」とのメドレーが聴ける。「Life Of Fortune And Fame」は愁いのあるオーケストラル・ソウル。その他、『Dance To The Music』収録の「I Ain't Got Nobody(For Real)」の、ややテンポが速くよりタイトな演奏のフランス盤シングル、『A Whole New Thing』収録の「Advice」の初期ヴァージョン「Take My Advice」なども収録。
スライがニューヨークで結成したバンドという触れ込みのアバコ・ドリームスのシングル「Life & Death In G & A」は、ジョー・ヒックス版よりもテンポの速い、リズム・ボックス抜きの強力なバンド・ファンク・サウンド。それもそのハズ、このバンドの実態はファミリー・ストーンの変名バンドというのが定説のよう。同様にファミリー・ストーンの変名と言われているのがフレンチ・フライズ。「Dance To The Music」のフランス語ヴァージョン「Danse A La Musique」は、演奏も別物で、正直言って「Dance To The Music」よりもこっちの方が好き。この曲のシングルB面「Small Fries」はテープ回転数を変えたヴォーカルが異色なナンバー。
スライのソロ名義の「For Real」は、「I Ain't Got Nobody」の大幅にアレンジが異なるジャジーなデモ・ヴァージョン。スライのソロでは他に、キンクス「You Really Got Me」のカバーもあり、2曲とも未発表曲。
ファミリー・ストーン結成前にフレディ・ストーンとグレッグ・エリコが組んでいたバンド、フレディ&ザ・ストーン・ソウルズは3曲収録されているが、当然ながらいずれも未発表曲。勢いのあるファンキー・ソウルの「LSD」、ジャンプ・ナンバーの「Something About You」、ホーンがイカしたR&Bナンバー「Superfunk」と、どれもイイ出来で、もし他にも録音が残された曲があるのなら聴いてみたいところ。
ファミリー・ストーンのデビュー・シングル「Underdog」のボー・ブランメルズによるヴァージョンは、同じ曲とは思えない換骨奪胎ぶり。ブランメルズはもう1曲「Are You Sure」があるが、ここでのヴォーカルはかなりスライっぽい。この2曲も未発表曲。
スライの盟友、ビリー・プレストンの「Can't She Tell」はスライとビリーの共作。スライ&ビリー・プレストン名義の、双方の持ち味が発揮されたデュエット曲「I Remenber」は未発表曲。