illmatic
Illmatic / Nas
 Columbia '94 

ヒップホップ黄金期を代表する歴史的名盤として名高いナズの1stアルバム『Illmatic』。
影響力絶大なDr.ドレーのGファンクが全米を席巻し、世界的なスターになったスヌープをはじめ、セールス面でも西に押され気味だったイースト・コーストのヒップホップ。スヌープに対抗しうる実力とカリスマを持つ東の切り札として登場したナズのもとに、DJプレミア、ラージ・プロフェッサー、ピート・ロック、Qティップといった東海岸のトップ・プロデューサーが集結。いずれのプロデューサーもこの逸材を前に気合いが入ったのか、渾身のトラックを提供。そんな屈強なビートとがっぷり四つに組むナズのラップが何より凄い。
ナズのレコーディング・デビューとなったメイン・ソース「Live At The Barbeque」を引用したイントロダクション「The Genesis」でアルバムは幕開け。ドナルド・バード「Flight Time」をサンプリングしたプレミア・プロデュースの「N.Y. State Of Mind」は、重厚かつ殺伐とした不穏なムード、ハードでファンクなビートにゾクゾクと鳥肌が立つ。プレミアは他に、哀愁漂うゲットー・メロウな「Memory Lane(Sittin' In The Park)」、催眠的なループがクセになる「Represent」の3曲を提供。
ナズとは所縁の深いラージ・プロフェッサーも3曲をプロデュース。定番アヴェレージ・ホワイト・バンド「School Boy Crush」の鈴の音サンプルを敷いた「Halftime」、ゆったりしたテンポでジリジリと焚きつける「One Time 4 Your Mind」、マイケル・ジャクソン「Human Nature」、クール&ザ・ギャング「N.T.」のホーンをサンプリングした「It Ain't hard To Tell」と、いずれもラージ印のジープなトラック。
ピート・ロックがプロデュースした、ピアノ・ループが気持ちいい「The World Is Yours」は、こんなイイ曲を『The Main Ingredient』用にキープすることなく、出し惜しみせずにナズに提供したピートの心意気にも震える超絶トラック。
Qティップ・プロデュースで、ティップ自身がフックを歌う「One Love」は、パーラメントのインヴィクタス時代の曲「Come In Out In The Rain」をサンプリングした、いかにもQティップらしさに溢れた名曲。
大物プロデューサー陣に混じって唯一人、ほぼ無名のL.E.S.のプロデュースによる「Life's A Bitch」は、ギャップ・バンド「Yearning For Your Love」のサンプルがメロウに折り重なり、ナズの父親であるオル・ダラのトランペット、AZの甲高いラップをフィーチャーしたジャジーなムードの良曲。