pleasure
Pleasure / Ohio Players
 Westbound '72 

オハイオ・プレイヤーズのウェストバウンドでの2枚目のアルバム『Pleaasure』。
もうジュニーの異能・個性全開のアルバムで、作曲・アレンジ・プロデュースからヴォーカルまで、ジュニーが完全にバンドのイニシアティヴを握っている。シュガーフットがヴォーカルを取る曲も多いが、シュガーがその強烈な個性と臭みを発揮するのはまだもう少し先の話。ジュニーが脱退したマーキュリー移籍後のような明快なファンクはココには無いが、奇妙に捻じれた異形のグルーヴ、ギトギトに絡み粘りつくリズム、変態的かつ独創的なアレンジ・センス、猥雑で異臭を放つようなムードは、なかなか取っ付き難いが、ジュニーが主導したこの時期のオハイオでしか味わえない唯一無二のサウンドだ。
アルバム冒頭のタイトル曲「Pleasure」は、バウンスしながらも糸を引くように粘るグルーヴに、ジュニーの爬虫類的なヌメッたヴォーカルと変態かつ天才的なアレンジが見事。それにしても、この複雑に展開していく独創的なアレンジメントを考えつくジュニーの頭の中は一体どうなっているのだろう。
ややブルージーでジャジーな「Laid It」や「Pride And Vanity」も、ヒネリが効いていて一筋縄ではいかないストレンジさ。ホーン・セクションをフロントに立てたインスト・ファンク「Walt's First Trip」、後の「I Want To Be Free」を思わせるようなコーラスも入るスウィートなスロウ「Varee Is Love」、グルーヴィーに突き進むファンク「Walked Away From You」、ゆったりとしたテンポが気持ちいいミディアム・ソウル「Paint Me」、「Funky Worm」は、まさに皮膚の下を虫が這いずり回るようなシンセ・フレーズ強烈な異物感を残す、グシャグシャに捻じれたグルーヴが粘りつくファンク・クラシック。ラストの深い哀愁を湛えたスロウ「Our Love Has Died」まで、駄曲無しの名盤。
英エイスのリイシューCDには、マーキュリー移籍後の74~75年にウェストバウンドが勝手に(?)リリースした未発表曲を中心にした編集盤『Climax』『Rattlesnake』から7曲をボーナス・トラックとして収録。この2枚の曲は、同じくエイスから再発された『Pain』『Ecstasy』に分散してボーナス収録されていて、それはそれでありがたいのだが、できれば分散させずにストレート・リイシューしてほしいところ。