R.I.P. Leon Ware 

leon

『I Want You』を初めて聴いたのは92年、18歳の頃だった。
その官能的な匂いと狂おしいまでのメロウネス、儚く切なく、どこか翳のあるその音楽の虜になった。
他のどのソウル・シンガーよりもマーヴィンが好きで、マーヴィンの他のどのアルバムよりも『I Want You』が好きだった。『I Want You』のような音楽を求めて、この音楽の秘密を知りたくて、いろいろなアルバムを聴いてみたけど、こんなサウンドのアルバムに他に出会うことは叶わなかった。ソングライター、プロデューサーとしてクレジットされたレオン・ウェアという名前は、まだこの時はさほど意識していなかった。

i want you

その後、レオンに興味を持つようになったのは、たしか93,94年頃だったか、ブラック・ミュージック・レヴューのニュー・ソウル特集記事に載っていた、『Musical Massage』のジャケットを見てから。この時初めてレオンが自身のアルバムをリリースしていたことを知ったのだが、何よりこのジャケットに魅かれて、何としてもこのアルバムを聴いてみたいと思うようになった。
が、当時はまだCD化もされておらず、アナログ盤もなかなか見つからず。ようやく『Musical Massage』のアナログ盤を手に入れたのは96年頃だったと思う。そこには、探し求めていた『I Want You』の世界が広がっていた。

musical massage
 
また、ちょうどその頃、カメール・ハインズ『Soul Degrees』、マックスウェル『Urban Hang Suite』にレオンは曲を提供、俄かに現役感を増してきた頃でもあった。両作とも70年代マーヴィンの影響が滲む傑作で、彼らがレオンを迎え入れたのも、あの『I Want You』の世界を求めたからだろう。これらの作品は今でも折に触れて聴く愛聴盤だ。

soul degrees urban hang suite

レオンの存在を強く意識するようになると、それまで散々聴き倒してきたあの曲が、実はレオンの作だったということに遅ればせながら気付いたり。ダニー・ハサウェイ『Extension Of A Man』の終曲を飾るゴスペル・バラード「I Know It's You」、パーラメント『Live P.Funk Earth Tour』のラストに収められた、じんわり沁みるスロウ「Fantasy Is Reality」、アヴェレージ・ホワイト・バンド『Cut The Cake』に収録の「If I Ever Lose This Heaven」...など、いずれも名曲中の名曲。そういえば、オマーの『For Pleasure』にもファンクっぽい「Can't Get Nowhere」を提供してたなぁなんて思い出したり。

extension of a manp funk earth tour
cut the cakefor pleasure

その後、レオン信奉はエスカレートして行き、レオンの他のリーダー作はもちろん、シリータやメリサ・マンチェスター、シャドウなど、レオンのプロデュース/作曲の作品を一通り聴き漁った。

とにかく、一聴してレオンと分かる、独特の官能と翳りのあるメロディ/楽曲には、タイムレスな魔力が宿り、今だ人々の心を捉えて離さない。
レオンの魂は死すとも、レオンのメロディはこれからも生き続ける。

leon and marvin