embrya
Embrya / Maxwell
 Columbia '98 

デビュー作『Urban Hang Suite』を聴きまくり、『MTV Unplugged』も愛聴していた当時、マックスウェルの2ndアルバム『Embrya』はリリース前からかなり期待していた。
その期待を上回る、完璧に透徹されたマックスウェルの世界が、このアルバムには広がっている。本作もリリース当時かなり聴きこんだが、結局『Urban Hang Suite』ほどの愛聴盤とはならなかったのは、強烈なインパクトを放つジャケットが原因ではなく、あまりにストイックに自分の音楽を突き詰めた本作の纏う、ある種オルタナティヴな感触のせいか。
当時のR&Bの極北に位置するかのような作品だが、今改めて聴き返してみて感じるのは、ファルセット主体のマックスウェルのヴォーカルの素晴らしさ。このキレと冴えは、今のマックスウェルには求め得ないもの。また、当たり前なのだが、演奏も凄くて、特にドラムスとベースの深いグルーヴに腹の奥底から揺らされる。
オープニング・トラックの「Everwanting : To Want You To Want」から、妖しく揺らめくスムーヴに乗って、繊細で魅惑的なマックスウェルのヴォーカル/多重コーラスが折り重なる。ほのかなラテン・テイストをアクセントにした幻想的なメロウ・グルーヴ「I'm You : You Are Me And We Are You(Pt Me & You)」、ストリングス・アレンジも美しいミディアム「Luxury : Cococure」、深く潜航するベースとドラムスのグルーヴと、ゆらゆらと揺れるヴォーカルが気持ちいい「Drowndeep : Hula」、リズム・セクションが太いグルーヴを紡ぐアーバン・メロウ「Martrimony : Maybe You」は、そのラテン匂わすジャズ・ファンク・テイストの「Arroz Con Pollo」へと繋がるは深い哀愁の滲むバラード。
「Know These Things : Should」と「Submerge : Til We Become The Sun」は深い哀愁の滲むバラード。カリビアンなムードを潜ませた「Gravity : Pushing To Pull」、ファンクネスを秘めたメロウ・グルーヴにファルセットが翻る「Eachhoureachsecondeachminuteeachday : Of My Life」、ラストは実験的なテープ逆回転インスト「Embrya」。