love and beauty
Love And Beauty / Lamont Dozier
 Invictus '74 

60年代モータウンの隆盛を支えたソングライター・チーム、ホランド=ドジャー=ホランド。
ヒッツヴィルの屋台骨として数々のヒット曲を送り出したこのチームは、60年代末にはモータウンを離れ、自身のレーベル、インヴィクタス/ホット・ワックスを立ち上げ。モータウンのLA移転後も、H=D=Hはデトロイトを根城にインヴィクタスからゴリゴリのノーザン・ソウルを作り続けたが、やがてチームからラモン・ドジャーが離脱し、73年にはABCからソロ・アルバムをリリース。本作『Love And Beauty』はドジャー離脱後の74年に古巣インヴィクタスからリリースされているが、実態は72年頃のソロ・シングルを中心とした作品。
ドジャーの作曲家としての側面だけでなく、歌い手としてのもうひとつの顔を前面に打ち出した作品だが、シンガーとしての力量は並といったところ。流石に良い曲を書くが、ややポピュラーに流れ鼻に付くところもアリ。アルバムは寄せ集め的で、頭数が足りなかったのだろう、インスト曲を3曲も含むあたりは、シンガー・ソングライターとしての姿勢を打ち出した作品としては中途半端な印象は拭えないが、ドジャー自身が本作のリリースを望んだのかどうか。
アルバム中最も人気なのは、1曲目の「Why Can't We Be Lovers」で、これはいわゆるこみ上げ系と評される好曲。その他、ミディアムの「If You Don't Want To Be In My Life」や、ドラマティックなストリングス・アレンジが施された「The Picture Will Never Change」も良いが、「Don't Stop Playing Our Song」あたりになるとソウル・ミュージックとしての妙味は薄いかも。
個人的に一番気に入っているのは「Don't Leave Me」と「New Breed Kinda Woman」で、これはインヴィクタスらしいデトロイト/ノーザン・ソウル・ナンバー。その「Don't Leave Me」のインスト・ヴァージョンの他、「Enough Of Your Love」「Slipping Away」といった謎のインスト・ナンバーは、ドジャーがアルバム制作のイニシアチヴを取っていれば収録されることはなかっただろう。