クラヴィネットの音が好きだ。
ワウ・ギターやスラップ・ベース、パーカッションなど、ファンキーなサウンドを体現する楽器/奏法はいろいろあるけれど、個人的にはクラヴィネットの音にどうしようもないファンクネスを感じてしまう。軋みをあげトグロ巻くように音を立て、爬虫類か節足動物のように蠢き這いずり回り、猥雑でドス黒いグルーヴを捻り出す何ともファンクネス滴る楽器。
って、コレ以前に別のブログで書いた内容そのままだが、とにかくクラヴィネットの音が入っているだけでファンク度3割増しぐらいに聴こえてしまうぐらい好き。
そんな大好物なクラヴィネットの効いたファンク・ナンバーを集めたプレイ・リスト。全12曲。
誰かこんなコンピ作ってくれんかな。
(アルバム・ジャケット及びタイトルから過去レビューにリンクしています)
M-1
Higher Ground / Stevie Wonder
from『Innervisions』
クラヴィネットと言えば、まずはこの人。
スティーヴィーのクラヴィ使いのファンキーな曲は数多くあるが、なかでもこの1曲となれば「Higher Ground」。まるでムカデが這いずるように蠢くクラヴィのフレーズが、全編通してモゾモゾと動き回る激ファンク。
M-2
The Heat Is On / The Isley Brothers
from『The Heat Is On』
スティーヴィーと並ぶ2大クラヴィネット・マスター、クリス・ジャスパー。
70年代アイズレーのメロウ・サイドにクリスが果たした役割は大きかったが、ファンク・サイドでもクラヴィネット使いで貢献。
アイズレー最高傑作『The Heat Is On』のタイトル曲での、ギトギトしたクラヴィ・サウンドは、この曲のファンクネスを濃縮増量させている。
M-3
Poet / Sly & The Family Stone
from『There's A Riot Goin' On』
スティーヴィーらに先駆けて、ファンクにクラヴィネットを持ち込んだのはスライとビリー・プレストンだろうか。
畢竟の大名盤である『暴動』は、またクラヴィネット・ファンク名盤でもある。ここでのスライの実験は、間違いなくスティーヴィーに影響を与えたハズ。「Poet」のクラヴィネットとリズム・ボックスが絡み合ったグルーヴは、ギットギトに糸を引きながらもバウンシーな、ダークなヘヴィー・ファンク。
M-4
Up For The Down Stroke / Parliament
from『Up For The Down Stroke』
Pファンク全盛期には、スペイシーで幾何学的なシンセ・サウンドや、「Flash Light」で確立したズブズブのシンセ・ベースの印象が強いバーニー・ウォーレルだが、宇宙に飛び出す前の70年代前半までは、土臭いクラヴィネットをゴリゴリ響かせる曲も多かった。
『Up For The Down Stroke』は、「Testify」の再演ヴァージョンや「Presence Of A Brain」など、Pファンクのなかではクラヴィネットを最も多用したアルバムのひとつだが、やはり極めつけはタイトル曲。引きずるようなルーズなグルーヴに、ギター・カッティングのようにザクザクと小気味よく刻み付けるクラヴィが超ファンキー(ただし、バーニーではなくビリー・ネルソン説もあり)。
M-5
A Joyful Process / Funkadelic
from『America Eats Its Young』
バーニーでもう1曲、まだレヴューしてなかったファンカの2枚組力作『America Eats Its Young』から。
この曲は完全にバーニーのクラヴィネットが主役。「シャボン玉とんだ」のフレーズを交えながら、いかにもバーニーといった感じの自由で遊び心に溢れ、かつファンキーこの上ない素晴らしいプレイを堪能できる。
M-6
Machine Gun / Commodores
from『Machine Gun』
ファンクにおけるクラヴィネットの使用例として、おそらくスティーヴィーの「Superstition」と並んで最もよく知られた曲が、コモドアーズの「Machine Gun」なのではないだろうか。
まだバラード偏重でファンクが軽くなってしまう前のコモドアーズ。まさにマシンガンのようにスピーディーに連射されるクラヴィが、この曲をこのバンド随一のファンク傑作たらしめている。
M-7
Don't Call Her No Tramp / Betty Davis
from『They Say I'm Different』
メタルみたいなガナリ声でドスを効かすヘヴィー・ファンク姉御、ベティ・デイヴィスも、太いベイエリア人脈を持っているためか、良質なクラヴィネット・ファンク多し。
「Don't Call Her No Tramp」は、グラハム・セントラル・ステーションのハーシャル・ケネディによるダークで猥雑なクラヴィがトグロ巻く弩級の重量級ファンク。
M-8
Spank-A-Lee / Herbie Hancock
from『Thrust』
ハービー・ハンコック史上最もブラックネス溢れるファンク・アルバム『Thrust』から。
マイク・クラークとポール・ジャクソンのリズム隊が繰り出すゴリゴリのハードコア・ファンクに乗せて、ハンコックのクラヴィがウゴウゴと唸る。凄腕のジャズ・ミュージシャンが本気でファンクをやったら、こんなモノ凄いことになるということを証明してみせたヘヴィー・ファンク傑作。
M-9
Mama Wailer / Lonnie Smith
from『Mama Wailer』
オルガン・ジャズの大家、ドクター・ロニー・スミスが、この曲ではオルガンの他にクラヴィネットをプレイ。
オルガン同様に脂っこいスミスのクラヴィが、こってりと濃厚な味わい。ラテン味と変な歌も相俟って、猥雑で下世話なムードを生むジャズ・ファンク・ナンバー。
M-10
Asiko / Tony Allen
from『Black Voices Revisited』
アフロ・ビート最重要ドラマーのトニー・アレン。この曲でももちろん主役はドラムなのだが、クラヴィネットも負けじと主張している。噛み付くようなクラヴィがギシギシと軋みをあげる、サイケデリックな雰囲気もあるファンク・チューン。
オリジナル・レコーディングのRevisitedヴァージョンはクラヴィネットは控え目だが、フランス人プロデューサーのドクターLがイジくったOriginalヴァージョンはクラヴィが前面に出てきている。
M-11
Cold Blooded / Common
from『Like Water For Chocolate』
このアルバムで、「Asiko」をサンプリングした「Heat」の次の曲がこの「Cold Blooded」。
パーラメント「Funkin' For Fun」のサンプルに乗せて、グシャグシャに拉げたクラヴィネットを刻み付けるのはディアンジェロ。自分の曲ではあまりクラヴィネットは使ってないように思うが、この曲では弩ファンキーなクラヴィ・プレイを全編に渡って垂れ流してくれる。
M-12
Streakin' Cheek To Cheek / Ohio Players
from『Skin Tight』
マーキュリー移籍後の『Skin Tight』にありながら、この曲はウェストバウンド期の爬虫類的なギトギト感(?)が色濃いナンバー。軋みをあげながら粘りつくビリー・ベックのクラヴィネットの音がそう感じさせるのだけど、これはベックではなくひょっとしてジュニー? 「Jive Turkey」にも、どう聴いてもジュニーなヴォーカルが入ってるし、まだジュニー在籍時のレコーディング・セッションだとしてもおかしくない、とか妄想してみる。
コメント
コメント一覧 (2)
僕もクラヴィネットの音が好きです。
クラヴィネットが入るとファンキー度が増しますね。
Brand New Heaviesのnever stop やIncognitoのalways thereのアルバム・バージョンなんかもクラヴィネットが効いてますね。
変わったところだと、デビューアルバムがJack Johnsonのプロデュースで知られるDonavon Frankenreiterのmove by yourselfもクラヴィネットが効果的に使われてカッコいいです。
クラヴィネット万歳です(笑)
クラヴィネット、ワウ・ギター、リズムボックスはファンク三種の神器と勝手に思っています。『暴動』が好きなだけではありますが(笑)。
BNHのnever stopにもしクラヴィネットが入っていなかったら、フツーにオシャレなイイ曲という程度だったかもしれないですね。クラヴィが入ることで一気にファンキーなカッコいい曲になったように思います。僕がクラヴィネット・フェチになったのも、今思えばファンク入門仕立ての頃に聴いたnever stopがキッカケだったかもしれません。
Donavon Frankenreiter はまったく知らなくて、Youtubeで視聴したのですが、この曲はクラヴィ好きのツボを突きまくりですね~。