rhythm box

プリセットされたリズム・パターンをひたすら延々と鳴らし続けるリズム・ボックス。
人の手によって演奏されない楽器(というか機械)としては、おそらくブラック・ミュージック史上初めて使用されたガジェット。淡々と、一定のリズム/パターンで鳴り続ける単調なパルスに、黒い艶やグルーヴを感じるのは何故だろう。
マエストロ・リズム・キングやリズム・エースなどの名機が知られるが、ソウル/ファンクのレコーディングにおける実際の使用例は多くはなく、局地的。パイオニアであるスライと、その影響下にあるベイエリアのバンドやPファンク勢、そしてマイアミ。
以下、手持ちの音源からピックアップした12曲のプレイリスト。
(アルバム・ジャケット及びタイトルから過去レビューにリンクしています)


chocolate cityM-1
Chocolate City / Parliament
 from『Chocolate City』

1曲目はコレしかない。
”The Man In The Box"とクレジットされたリズム・ボックスが淡々とリズムを刻むなか、キーボード、ギター、ベース、ホーンが十分な隙間をつくりながら絡み、クリントンが喋り倒す。サビは”Gamin' On ya"のコーラスとホーンで爆発。
後の「P.Funk(Wants To Get Funked Up)」のヒントにもなったに違いない、異形のクール・ファンク。

there's a riot goin onM-2
Luv N' Haight / Sly & The Family Stone
 from『There's A Riot Goin' On』

黒人音楽史に残る大名盤にしてクラヴィネット・ファンク名盤である『暴動』は、またリズム・ボックス・ファンク名盤でもある。
(マイナーな先例はあったかもしれないが)ブラック・ミュージック史上はじめてリズム・ボックスが使われたアルバムの1曲目。リズム・ボックスと生ドラムとベースを合わせ、ヘヴィーでダークなグルーヴの渦を作り出したスライは、やはり天才と言うしかない。

stangaM-3
Stanga / Little Sister

スライのレーベル、ストーン・フラワーに残された録音には、スライが『暴動』以前に行ったリズム・ボックスを使った実験を聴くことができる。
スチュワート家の末妹、ヴェットを含む3人組女性コーラス・グループ、リトル・シスターのシングル曲の中では、この「Stanga」が最も『暴動』のダークなファンクネスに近い、リズム・ボックス剥き出しのファンク・ナンバー。
『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』や、『Listen To The Voices Sly Stone In The Studio 1965-70』といったコンピで手軽に聴くことができる。

up for the down strokeM-4
The Goose / Parliament
 from『Up For The Down Stroke』

パーラメントでもう1曲。
シュコシュコと鳴り続けるリズム・ボックスも含め、これは完全に『暴動』仕様のサイケデリックでドロドロしたダークなスロー・ファンク。
ビザールで悪魔的なジャケットのイメージにも何だかこの曲の禍々しいムードに合っている。

graham central stationM-5
Tell Me What It Is / Graham Central Station
 from『Graham Central Station』

ラリー・グラハム版のスライ&ザ・ファミリー・ストーンであるグラハム・セントラル・ステーションも、リズム・ボックスを使用したファンク・ナンバーをいくつか残している。
タワー・オブ・パワーのヴォーカル、レニー・ウィリアムズが参加したこの曲。リズム・ボックスとリズム・セクションがこんがらがりながら突進するハードなファンク・チューン。

release yourselfM-6
G.C.S. / Graham Central Station
 from『Release Yourself』

GCSからもう1曲、その名も「G.C.S.」。
こちらはリズム・ボックスにムーグやクラヴィネットが絡む、ウネウネ、グニャグニャしたファンク。
紅一点のパトリース”チョコレート”バンクスの担当楽器がリズム・ボックスとクレジットされているが、ボタンを押すだけなのにわざわざクレジットする必要があるのだろうか、というのが長年の疑問。

inspiration informationM-7
Aht Uh Mi Hed / Shuggie Otis
 fom『Inspiration Imformation』

スライ同様にマルチ・プレイヤーであるシュギー・オーティスの、どっぷり『暴動』の影響下にあるアルバム『Inspiration Information』から。
侘しく鳴らすリズム・ボックスのに、メロウなオルガンが絡むこの曲は、「Family Affair」を思わせるようなアシッド・グルーヴ。

why can't we live togetherM-8
Funky Me / Timmy Thomas
 from『Why Can't We Live Together』

アルバム丸ごとリズム・ボックスとオルガンのみで演奏された究極のリズム・ボックス・アルバム『Why Can't We Live Together』から。
アルバム・タイトル曲がやはり名曲だが、ファンク・ナンバーとしては、ゴリゴリの太いビートで暴走するリズム・ボックスが凄まじいファンクネスを撒き散らすこの「Funky Me」がヤバい。

party downM-9
Let The Good Times Roll / Little Beaver
 from『Party Down』

ティミー・トーマスの他、ジョージ・マックレー「Rock Your Baby」など、何故かリズム・ボックス使用例の多いマイマミ・ソウル。リトル・ビーヴァーの哀愁メロウ&ファンキーなマイアミ・ソウル名盤『Party Down』もリズム・ボックスがたっぷり。
「Let The Good Times Roll」はリズム・ボックスとギターがレイジーなグルーヴをロールするファンキーな逸品。

i'm just like youM-10
I'm Just Like You / 6ix

ストーン・フラワー・レーベル所属の黒白混合バンド、6ix。
当然ながらスライ&ザ・ファミリー・ストーンのフォロワーで、スライのプロデュース。
この曲でも太いリズム・ボックスがゴリゴリと唸っているが、そこに土臭いハーモニカが絡んでくるのが、このバンドの特徴。スワンプ臭も漂うスロー・ファンクはクセになる。
コレも『I'm Just Like You : Sly's Stone Flower 1969-70』『Listen To The Voices Sly Stone In The Studio 1965-70』で聴くことができる。

goin homeM-11
Goin' Home / Faye Marshall

マーヴィン・ホームズ主宰のベイエリアのレーベル、ブラウン・ドアーに残された、女性シンガー、フェイ・マーシャルのリズム・ボックス・シスター・ファンクの傑作。
スライの蒔いた種が西海岸一帯に広がっていったことが分かる。
ラヴン・ヘイトのコンピレーション『Bay Area Funk 2』や、日本のシャウト・レーベル編纂の『The Brown Door Story』で聴くことができる。

game dames and guitar thangsM-12
California Dreamin' (Reprise) / Eddie Hazel
 from『Game, Dames And Guitar Thangs』

ママス&パパスのあの曲を、重厚にウネるスロー・ファンクに仕立てたエディ。
しかしここでピックアップするのは、リズム・ボックスを使用し『暴動』サウンドを再現したリプライズ版のほう。
サイケデリックでスクリュー気味のヘヴィー・スロー・ファンク。