eroica
Eroica / Wendy & Lisa
 Virgin '90 

レヴォリューションのメンバーとしてプリンスと活動を共にしたウェンディ&リサの2人。
『Dirty Mind』の頃からプリンスのバンドに加わったリサ・コールマンが、旧知のギタリスト、ウェンディ・メルヴォワンを誘い、再編されたバンド=レヴォリューションに加入、この体制で『Purple Rain』 『Around The World In A Day』 『Parade』の3枚のアルバムを制作。また、この間に撮影された2本の映画、『Purple Rain』『Under The Cherry Moon』にも出演。
レヴォリューション時代のプリンスは、その長いキャリアにおける全盛期であり、セールス面では間違いなくピークだった。特に『Around The World In A Day』と『Parade』は、2人はプリンスのただのバンド・メンバーではなく、創作上の重要なパートナーと言える存在だった(プリンスと2人の蜜月が更に深まり生まれた『Dream Factory』は、結果的にレヴォリューション解散=プリンスと2人との関係の破綻により葬られた)。
プリンスの父は無名のジャズ・ミュージシャンだったが、自身が音楽の道を志すには理想的な環境ではなかった。幼少期に両親は離婚し、母方に引き取られるも継父と折り合いが悪く、若くして家を出ている。実父がプリンスに残したのはピアノ1台で、楽器や楽理は独学でマスターした。
それに比べ、ウェンディとリサの2人は共にミュージシャン一家に生まれ、音楽家を志すには恵まれた環境に育ったエリート。プリンスはそんな2人からインスパイアされる部分も多かっただろうし、ジェラシーを感じる部分もあったに違いない。
レヴォリューション解散後、2人はコンビで音楽活動をスタート。80年代後半に2枚のアルバムを制作した後、90年にリリースした3rdアルバムが本作『Eroica』。最初の2枚は今だに未聴なのだが、本作はリリース当時に聴いて、かなり衝撃を受けた。
ここで聴かれるのは、『Around The World In A Day』『Parade』を、そこから独自に展開したいったようなサウンド。ファンキーでサイケデリックな、レヴォリューションのその後を想像させる音楽。主にヴォーカルを取っているのはウェンディで、その線の細い白いヴォーカルもあってか、メロディアスでストレートなポップ/ロック志向もあるため、アクの強いプリンスの音楽と比較すると食い足りない部分はあるが、しかしこれはかなりの力作。
本作はウェンディ&リサの名義ではあるが、ウェンディの双子の妹で、ザ・ファミリーのメンバーでもあったスザンヌを含むバンド編成による録音で、メンバーは全員女性。ゲストでK.D.ラングを招いた曲もあるあたりにも、ウェンディとリサの意志を読み取れる。
アルバムの1曲目、「Rainbow Lake」はリズム・ボックスがパシャパシャ鳴るスライ調のクールでサイケなファンク・チューンで、途中に中近東風のフレーズが出てくるあたりは「Around The World In A Day」を思い出さずにはいられない。 乾いたグルーヴで爽快に駆け抜けるポップ・ロック・ナンバー「Strung Out」は、ハーディー・ガーディーの音色も印象的。「Mother Of Pearl」もサイケデリックな60'sムードで、何となくレニー・クラヴィッツがやりそうな曲。リサがリード・ヴォーカルを取る「Don't Try To Tell Me」は、ウェンディの父・マイケルがオーケストラ・アレンジを手掛けたバラード。浮遊感のあるパーカッシヴなグルーヴのミッド・ファンク「Crack In The Pavement」、幻想的なストリングス・アレンジと乾いたタイコの音に、ウネウネと揺れるようなグルーヴの「Porch Swing」などは、『Parade』あたりのムードを引き継いでいる。
ハードなギターが唸るロック・バラード「Why Wait For Heaven」、ややポップな味付けの「Turn Me Inside Out」、「Skelton Key」はプリンス臭濃厚な超絶ファンク・チューンで、個人的には本作のベスト・トラック。カントリー・タッチの「Valley Vista」、ラストの「Staring At The Sun」は昂揚感に満たされるロック・チューン。