never say you cant survive
Never Say You Can't Survive / Curtis Mayfield
 Curtom '77 

社会派路線を突き進んだ70年代前半のカーティス。75年の『There's No Place Like America Today』は、その集大成となる畢竟の名作だったが、セールス的には大惨敗。既にニュー・ソウル時代は終焉を迎え、社会的なメッセージを発していたブラック・ミュージシャンは、カーティスの他はギル・スコット・ヘロンだけになっていた。端的に言えば、時代に合わなくなっていた。

さしものカーティスも、ここへきて社会派からラヴソング主体へと大きな路線修正を余儀なくされた。歌う内容が変われば、サウンドも変わる。緊張感漲るストリングスは、甘く優雅な弦の調べへ。エッジの効いたパーカッションは、柔らかなグルーヴへと表情を変えた。かつてのファンキーでスリリングなサウンドを期待すると肩透かしを喰うが、しかしこの77年の本作『Never Say You Can't Survive』の円やかな豊穣感は素晴らしい。メロウでスウィートなソウル・ミュージック。仄かな官能を湛えたカーティスのファルセットの艶やかさと、アーシーなキティ・ヘイウッド・シンガーズのコーラスの対比も心地いい。マーヴィン・ゲイ『I Want You』や、ジョニー・ブリストル『Bristol's Creme』と併せて聴きたくなる、愛すべき佳作。

オープニングの「Show Me Love」から、スウィートに熟したメロウ・ソウルに蕩ける。エレガントなストリングスと嫋やかなホーン・アレンジに包まれるミディアム「Just Want To Be With You」、アコギの爪弾きが清々しいバラード「When We're Alone」、アルバム・タイトル曲の「Never Say You Can't Survive」は、本作中で唯一、男女の恋愛を歌ったラヴ・ソングではなく、隣人愛、同胞への愛をテーマにした曲。
タイトなドラムスとベースが心地よいグルーヴを紡ぐ「I'm Gonna Win Your Love」、アーバンでムーディーなスロウ「All Night Long」、「When You Used To Be Mine」はノスタルジックなムードのバラード。ラストの「Sparkle」は、前年にカーティスがプロデュースしたアレサ・フランクリン『Sparlke』のアルバム・タイトル曲のセルフ・カバー。アレサがゴスペル丸出しの歌ぢからで盛り上げるのに対し、こちらはカーティスのファルセットをコーラスが支える。