ドラム編に続いて、今回はベース編。
数多のポピュラー音楽において、ベースは地味な脇役的扱いかもしれないが、リズム音楽であるブラック・ミュージック、殊にファンクにおいては、ベースは花形の楽器で、スター・プレイヤーも数多い。
ファンク・バンドにあっては、やはりドラムスとの相性が重要で、カッチリ噛み合ったベースとドラムスから生まれるグルーヴは何物にも替え難い快感をもたらす。
以下は数多くいるイカシたベーシストの中から選んだ、好きなファンク・ベーシスト10選。楽器を演れない聴き専なので、ベースの専門的なことやテクニカルな部分はよく分かっていないが、いちファンク・ファンとして感覚的に選んでみた。


bootsy
William "Bootsy" Collins

No.1ファンク・ベーシストと言えば、この人しかいない、ブーツィー・コリンズ。
10代でJB'sに抜擢、「Sex Machine」「Super Bad」「Give It Up Or Turnit A Loose」「Soul Power」などなどのウルトラ・スーパー・ヘヴィー・ファンクで演奏。74年ごろからはPファンクに本格参戦、ここではベースに加え、ギター、ドラムスなども演奏し、更に作曲、プロデュースまで手がける大活躍。パーラメント/ファンカデリックの他、自身のバンドであるブーツィーズ・ラバー・バンドを立ち上げ、ホーニー・ホーンズなどのスピンアウトものまで、Pファンク帝国黄金期の実務面を事実上取り仕切った。
ジェイムス・ブラウンにしろ、ジョージ・クリントンにしろ、そのキャリアのピークがブーツィー在籍時とピッタリ重なっているのは偶然でも何でもなく、ブーツィーのベースが彼らの表現を飛躍的に進化させたと言っても過言ではないだろう。まさにファンク請負人。
代表作としては、本来はラバー・バンドの作品を挙げるべきかもしれないけれど、ブーツィーが初めてアルバム全体の制作に関わった『Chocolate City』を。「Ride On」をはじめ、ミュートロンでブリブリ、グニョグニョにウネリまくるブーツィーのベースが衝撃的。
chocolate city
Chocolate City / Parliament


boogie mosson
Cordell "Boogie" Mosson

ブギーは、ブログのプロフィールのアイコンに使っているぐらい、個人的に最も敬愛するベーシスト。
幼馴染みのゲイリー・シャイダーとユナイティッド・ソウルというバンドをやっていたブギーは、ゲイリーとともに72年頃からファンカデリックに加入。しかし、程なくしてPファンクに合流してきたのがブーツィー。ベースのみならずマルチな才能に溢れ、キャラ立ち抜群、カリスマ的魅力を持つブーツィーに対し、小柄で地味な印象のブギーは、完全にその影に隠れてしまった。やがて、ブーツィーはラバー・バンドの方で忙しくなり、Pファンク本隊への関与は相対的に薄くなるが、今度はジャズの素養もある凄腕ベーシスト、ロドニー"スキート"カーティスの加入により、ブギーはやがてギターへと転向してしまう。
Pファンク作品は曲ごとのクレジットがなく、アルバムのクレジットもいい加減だったりするので、実際誰がベースを弾いているのか分からない曲が多いが、ワウを多用せずドッシリとした重いベースが入っていれば、それはブギーの演奏だと思っている。 『Funkentetechy VS. The Placebo Syndrome』では、ベースでクレジットされているのはブギーのみだが、クレジットをあまり鵜呑みには出来ないとしても、大半の曲はブギーだろう。
また、パーラメント/ファンカデリックのステージでベースを演奏していたのはブーツィーではなくブギーだった。 『Live P.Funk Earth Tour』での、ドックンドックンと脈打つような超重量級ベースは、Pファンク全盛期のボトムを支え続けた男の凄味を感じさせる。
p-funk earth tour
Live P.Funk Earth Tour / parliament


george porter
George Porter Jr.

ミーターズのベーシスト、ジョージ・ポーターJr。
そのグルーヴィーなベースは、ジョセフ"ジガブー"モデリステのドラムスとともに、ニューオリンズ・ファンク最高のグルーヴを生み出した。
初期のジョシー時代の3枚や、リプリーズの2枚目『Rejuvenation』も良いが、ここでは75年の『Fire On The Bayou』を。タイトル曲や「Love Slip Upon Ya」、そして「Can You Do Without?」のトグロ巻くグルーヴィーこの上ないベース・ラインが耳にこびり付く。
fire on the bayou
Fire On The Bayou / The Meters


larry graham
Larry Graham

ファンク・ベースの父、スラップ・ベースの祖、ラリー・グラハム。
スライ&ザ・ファミリー・ストーン~グラハム・セントラル・ステーションと、ベースという楽器の可能性を追求し続けたファンク・ベース馬鹿一代。ブーツィーをはじめ、後進のファンク・ベーシストたちに与えた影響は絶大。
代表作としては、ファンク・ベースの金字塔「Thank You」を含む、ラリー在籍時のファミリー・ストーンの集大成である『Greatest Hits』を挙げたい。
greatest hits
Greatest Hits / Sly & The Family Stone


rocco
Francis "Rocco" Prestia

ベイエリア・ファンクの雄、タワー・オブ・パワーのベーシスト、フランシス"ロッコ"プレスティア。
よく、"プクプク"という擬音で表される、細かい符割りが特徴的な個性的なプレイ・スタイルで、デイヴィッド・ガリバルディのドラムスとのコンビネーションは抜群。オークランド・ファンクと聞いて真っ先に思い浮かべるのが、ロッコのベースであり、TOPのリズム隊の繰り出すグルーヴだ。
その代表的な演奏が聴けるのが、3rdアルバム収録のファンク・クラシック「What Is Hip?」。この曲でのロッコのベースは、とても人間技とは思えない。
tower of power
Tower Of Power


verdine white 
Verdine White

アース・ウィンド&ファイアのベーシストで、モーリス・ホワイトの弟、ヴァーダイン・ホワイト。
徐々にポップへクロス・オーバーしていくバンドにおいて、ファンクを繋ぎ留めていたのがヴァーダインのベースだった。ブチブチと細かく音を切りながらグルーヴするベースはなかなかに個性的。
『That's The Way Of The World』収録の大ヒット曲「Shining Star」や、個人的に一番好きなアースの曲「Happy Feelin'」などでも、ファンクの核心はヴァーダインのベースにある。
thats the way of the world
That's The Way Of The World / Earth, Wind & Fire


fred thomas
Fred Thomas

今回この記事を作成するにあたって、そのご尊顔を初めてちゃんと認識したフレッド・トーマス。
ブーツィーが去った後、70年代のJB'sでベースを担った人物。
ブーツィーのようなアタックの強さはないが、黒く塗り込めるような重いベースは、ジョン"ジャボ"スタークスのドラムスとの相性はぴったりだった。
JB’sのジャズ・ファンク名盤2nd『Doing It To Death』でも、もちろんベースはフレッド。「More Peas」でのグルーヴィーなベースはヒップホップ方面でもサンプリングされまくっている。
doing it to death
Doing It To Death / The J.B.'s


kool bell
Robert "Kool" Bell

ヤクザなストリート臭漂うジャズ・ファンク・バンドとしてスタートしたクール&ザ・ギャング。
バンドの屋台骨を支えたのは、ロバートとロナルドのベル兄弟。兄ロバートは、ニックネームのクールがバンド名になっていることからも、バンドのイニシアチヴを握っていたことが分かる。際立った特徴のあるベーシストというワケではないかもしれないが、ロバートのベースがクールのファンクをガッシリと支えていた。
『Live At The Sex Machine』は、演奏や録音の荒さもあって、何やらヤバイ雰囲気が充満している漆黒のジャズ・ファンク・ライヴ盤。地の底から轟くようなベースのドス黒さは尋常じゃない。
live at the sex machine
Live At The Sex Machine / Kool & The Gang


paul jackson
Paul Jackson

ハービー・ハンコック、ヘッドハンターズのベーシスト、ポール・ジャクソン。
ゴリゴリとしか表現しようのないヘヴィーでイカツい極太ベースは、超弩級のファンクネス。
個人的には、ハーヴィー・メイソンよりも、マイク・クラークのドラムスとのコンビネーションが好きだ。
代表作はもちろん『Survival Of The Fittest』。「God Make Me Funky」「If You've Got It, You'll Get It」でのベースはまるでファンクの塊。
survival of the fittest
Survival Of The Fittest / The Headhunters


mark adams
Mark Adams

スレイヴの剛腕ベーシスト、マーク・アダムス。
鋼のように硬質で重く太いベースが特徴で、アダムスのベースが完全にこのバンドのグルーヴの軸になっている。70年代後半~80年代初め頃までのファンク界においては、屈指のヘヴィー・ファンク・ベーシストではないかと思う。
80年の『Stone Jam』は、まさに巨大な岩石がゴツゴツとぶつかり合っているようなヘヴィー・ファンク・ジャム。アダムスのベースが弾き出す鋼のグルーヴは圧巻。
stone jam
Stone Jam / Slave