dangelo

ディアンジェロはこれまでもカバー曲をいくつか発表している。
スタジオ録音のオリジナル・アルバム3枚『Brown Sugar』 『Voodoo』 『Black Messiah』に収録された曲は、

・Crusin' (Smokey Robinson)
・Feel Like Makin' Love (Roberta Flack)

の2曲のみだが、
ライヴ盤やシングル曲、サントラ盤提供曲、他アーティストとのコラボ曲など、オフィシャルにリリースされたものは、知る限りでは以下のようなものがある。

・Can't Hide Love (Earth, Wind & Fire)
・Heaven Must Be Like This (Ohio Players)
・Sweet Sticky Thing (Ohio Players)
・Fencewalk (Mandrill)
・I'm Glad You're Mine (Al Green)
・Girl You Need A Change Of Mind (Eddie Kendricks)
・She's Always In My Hair (Prince & The Revolution)
・Your Precious Love  w/ Erykah Badu (Marvin Gaye & Tammi Terrell)
・Everybody Loves The Sunshine (Roy Ayers Ubiquity)
・Water No Get Enemy w/ Femi Kuti, Macy Gray & Others (Fela Ransome Kuti & Africa 70)
・I'll Stay w/ RH Factor (Funkadelic)
・Sing A Simple Song w/ Chuk D, Isaac Hayes (Sly & The Family Stone)

その他、ライヴではクラシック・ファンク/ソウル・ナンバーのカバーも多かったり、他アーティストの客演でフックを歌ったりしたものもあったりで、こういうところからもディアンジェロのファンク、ソウル愛が伝わってくる。

そのうちにカバー・アルバムを出してくれるのではないか、もちろんクエストラヴもガッツリ絡んで、ディアンジェロ版『Wake Up!』みたいなものを期待しているのだが、はたしてどんな曲が収録されるのか、どの曲をカバーしてほしいか、という個人的な希望丸出しで勝手に妄想してみた。


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New Position / Prince & The Revolution
 from 『Parade』

プリンスは「She's Always In My Hair」をカバーしてるが、最近ではテレビ番組"The Tonight Show Starring Jimmy Fallon"でのプリンス追悼パフォーマンス「Sometimes It Snows In April」の感動的な名演が今も記憶に新しい。
また、2013年には"Brothers In Arms"と題した、クエストラヴとのドラムスとキーボードのみのライヴを、ブルックリン・ボウルとフィラデルフィアのシアター・オブ・リヴィング・アーツ、そしてプリンス・ファンの聖地、ミネアポリスのファースト・アヴェニューで行っているが(ファースト・アヴェニューではエリック・リーズやポール・ピーターソンを含むバンド編成だった模様)、そこでは「New Position」や「Pop Life」をやっている。
「New Position」はブラザーズ・イン・アームズではやや空回りしていたような印象だったので、バンド・セットでのスタジオ録音もぜひ聴いてみたい。

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If You Want Me To Stay / Sly & The Family Stone
 from 『Fresh』

スライのトリビュート・カバー・アルバム『Diffrent Strokes By Different Folks』収録の「Sing A Simple Song」は、チャックDとアイザック・ヘイズという大先輩に遠慮したのか、2人に終始押され気味だったが、選曲も合っていなかったのかもしれない。
ディアンジェロがやるなら、やはり『暴動』以降の曲だろう。ヴァンガードに近い編成で臨んだ2012年のボナルー・フェスでは「Babies Makin' Babies」を、前述のブラザーズ・イン・アームズでは「Let Me Have It All」「(You Caught Me)Smilin'」「Africa Talks To You "The Asphalt Jungle"」と3曲も演っているし、ザ・ルーツをバックに従えた2014年のアフロパンク・フェスでは「Thankful N' Thoughtful」と、実際ライヴでは『暴動』と『Fresh』に集中。
「Just Like A Baby」がドンピシャにハマりそうだが、ここではエリック・ベネイのカバーも懐かしい「If You Want Me To Stay」を。大定番曲なだけに、ライヴでカバーしてそうな気もするが、ディアンジェロの弾く、くぐもったキーボードに乗せて歌われるこの曲を聴いてみたい。

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Good Old Music / Funkadelic
 from 『Funkadelic』

ディアンジェロがどれほどPファンク好きかということは、『Voodoo』1曲目の「Playa Playa」で一聴瞭然。カバーは、ロイ・ハーグローヴのプロジェクト、RHファクターの『Hard Groove』収録のファンカデリック「I'll Stay」があるが、他にも、『Voodoo』のアウトテイクとして流出したセッション音源では「If You Got Funk You Got Style」をやっていたし、雑誌GQの企画でカバーした「Soul Mate」、ボナルー・フェスでの「Funky Dollar Bill」「Hit It And Quit It」とブーツィーズ・ラバー・バンド「Hollywood Squares」、ブラザーズ・イン・アームズでの「Cosmic Slop」「Do That Stuff」、アフロパンク・フェスでの「Miss Lucifer's Love」「No Head No Backstage Pass」、その他ライヴでは「Good To Your Earhole」や「Mothership Connection」、「I've Been Watching You」をカバーしたりと、相当なフリークであることが分かる。特にファンカデリックが好みのよう。
「Good Old Music」の、ティキ・フルウッドのルーズなドラム・ブレイクを、クエストラヴのプレイで聴いてみたい。

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Slippin' Into Darkness / War
 from 『All Day Music』

ウォーの曲はこれまでにカバーしていないが、間違いなくディアンジェロはウォーの音楽を好きだろう。
なかでも、この「Slippin' Into Darkness」のカバーはぜひ聴いてみたい。この泥臭くウネるグルーヴを再現できるのは、現在ではディアンジェロ&ザ・ヴァンガードをおいて他にはいないだろう。

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When Seasons Change / Curtis Mayfield
 from 『There's No Place Like America Today』

カーティスの曲としては、ブラザーズ・イン・アームズで「Mother's Son」をやっていたり、またTVショウで披露した「Give Me Your Love」をYoutubeで見ることができる。
『Voodoo』の「The Line」や「The Root」を聴いて最初に連想したのは、抑揚や展開を極力排したようなこの「When Seasons Change」だった。囁く様なファルセットで、ねっとりと纏わりつくようにこの曲を歌うディアンジェロを妄想してみる。

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Sun Goddess / Ramsey Lewis
 from 『Sun Goddess』

ディアンジェロはアースの大ファンでもあるらしく、ライヴ盤に収録された「Can't Hide Love」のオリジナルが入っている『Gratitude』は、好きなアルバムのベスト5に入ると本人が言ったとされている(残り4枚を知りたい)。「Can't Hide Love」以外では、『Voodoo』アウトテイク音源での「Fair But So Uncool」の他、ザ・ルーツ「Star」に客演しフックで「Shining Star」を歌っている。
アースの面々が完全バックアップしたラムゼイ・ルイスの「Sun Goddess」の、爽快感溢れるブラジリアン・スキャットによるコーラスを、ディアンジェロのヴォーカル多重録音で聴いてみたい。

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Jesus Children Of America / Stevie Wonder
 from 『Innervisions』

スティーヴィーは意外にもカバーしていないが、96年のグラミーで、当時ディアンジェロ同様に期待の新星としてデビューしたトニー・リッチとの共演で、「Superstition」「Living For The City」「I Wish」「Higher Ground」をメドレーでパフォーマンスしたことが知られている。
スティーヴィーなら、ダークなスロー・ファンクの「Maybe Your Baby」も相性良さそうだが、一聴地味ながらもめちゃめちゃグルーヴィーな「Jesus Children Of America」を希望。

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Have You Ever Been(To Electric Ladyland) / The Jimi Hendrix Experience
 from 『Electric Ladyland』

『Brown Sugar』が成功を収めた後、次作の構想を練っている時に、エンジニアのラッセル・エレヴァドがディアンジェロと同乗した車中で、何気なくカーステで流したジミの『Electric Ladyland』にディアンジェロは衝撃を受け、急いでスタジオに戻って何度も繰り返し聴いた、という有名なエピソードがある。この時ディアンジェロは初めて本作を聴いたようで、相当にインスパイアされたようだし、この時構想中だった2ndアルバム『Voodoo』は、ジミの忘れ形見であるエレクトリック・レディランド・スタジオで録音された。
「Have You Ever Been(To Electric Ladyland)」をディアンジェロは、ボナルー・フェスでカバーしている。カーティス・メイフィールドの影響を受けているという点でも、ディアンジェロとジミのこの曲には接点がある。

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Who Is He(And What Is He To You)? / Bill Withers
 from 『Still Bill』

ビル・ウィザーズの曲では、98年にTVショウでデイヴィッド・サンボーンと共演した「Use Me」がある。
その「Use Me」を含む名盤『Still Bill』でドラムを叩いているのは、『Black Messiah』でヴァンガードに参加したジェイムス・ギャドソン。「Who Is He(And What Is He To You)? 」は、クールな凄みたっぷりのミシェル・ンデゲオチェロによるカバーも最高なスロー・ファンクだが、ディアンジェロがやるからには、ギャドソン本人による再演も聴いてみたいし、クエストラヴがどうプレイするかもまた聴いてみたい。

na poiM-10
Na Poi / Fela Ransome Kuti & The Africa 70
 from 『Na Poi』

フェラ・クティのトリビュート盤『Red Hot + Riot』での、「Water No Get Enemy」のカバーは素晴らしかった。オリジナルに忠実でありながら、『Voodoo』と地続きのサウンドは、あのアルバムの独特のレイド・バックしたグルーヴが、フェラやアフロ・ファンクからも影響を受けていることを教えてくれた。
「Na Poi」の、濃厚にアフロで猥雑なレイド・バックしたグルーヴは、ディアンジェロも好みに違いない。

pleasureM-11
Laid It / Ohio Players
 from 『Pleasure』

ディアンジェロはオハイオ・プレイヤーズも相当に好きなよう。「Heaven Must Be Like This」「Sweet sticky Thing」の他にも、『Voodoo』アウトテイクの「Pride & Vanity」、ボナルー・フェスでも「Pride & Vanity」の他「Players Balling(Players Doin' Their Own Thing)」、ブラザーズ・イン・アームズとアフロパンク・フェスでは「Our Love Has Died」をやっている。
「Laid It」は奇才ジュニーの個性炸裂の、一筋縄では行かない捻じれまくったストレンジ・ファンク。ディアンジェロがこれをどう料理するのか興味深い。

lets get it onM-12
Just To Keep You Satisfied / Marvin Gaye
 from 『Let's Get It On』

ディアンジェロの幼少期からデビュー前まで、毎晩のようにマーヴィンがディアンジェロの夢枕に立っていた(本人談)というのも有名なエピソード。そのヴォーカル・スタイルは、マーヴィンからの影響大なのは言うまでもなく、エリカ・バドゥとデュエットした「Your Precious Love」のカバーは、まだ若かったこともあってか、偉大なる師を懸命になぞるような歌唱が何だか微笑ましかった。
『Let's Get It On』の終曲を飾る「Just To Keep You Satisfied」は、簡素な演奏をバックにマーヴィンがファルセット~テナーを幾重にも重ねる美しくも儚いバラード。おそらくディアンジェロは原曲に忠実に、マーヴィンに成り切って甘いヴォーカルを重ねるに違いない。