marvin

70年代以降のソウル・ミュージックに尋常ならざる影響を与えたマーヴィン・ゲイのアルバム『What's Going On』、そして楽曲としての「What's Going On」。その神通力は今だ衰えず。
戦争や人種問題、都市の貧困から環境問題までを取り上げた社会派のメッセージや、アルバムを構成する楽曲に連続性を持たせ、ひとつの組曲のように作り上げるコンセプト・アルバムの手法などは、『What's Going On』以降のソウル・ミュージックに受け継がれ、その精神は現在のブラック・ミュージックに至るまで脈々と流れ続けているが、サウンド面での影響力もまた甚大。

whats going on

リッチな管と弦の調べ、ドラムスとベースのガッシリとしたリズム、柔らかくも情熱的なギター、乾いた音色のパーカッション。ソウル/ジャズ/ラテンからクラシックまでを結びつけたハイブリッドなサウンドは、口溶けは滑らか、甘く豪奢でシルキー、それでいてスピリチュアル。そして、何層にも重ねられたミルフィーユのごときメロウ・サウンドに溶け込む、マーヴィンのファルセット~テナー。
この「What's Going On」の影響は、ソウル、ファンク、ジャズを中心に、世界中の音楽へと波及。数多くのカバーと、「What's Going On」的な楽曲が生まれた。そんな「What's Going On」な曲の中から、お気に入りの曲を12曲選んでみた。


donny hathaway liveM-1
What's Going On / Donny Hathaway
 from『Live』

「What’s Going On」のカバーと言えば、真っ先に挙がるのがダニー・ハサウェイのライヴ盤。個人的には、マーヴィンよりもダニーの「What's Going On」を先に聴いたこともあり、オリジナル版以上に思い入れのある1曲。
さんざん聴きまくったはずなのに、今でも聴くと鳥肌やら涙やら涎やらが出まくってしまう。まさに名演、名唱。

just me n youM-2
After Hours ~ Heaven On Earth / J.R. Bailey
 from『Just Me 'N You』

アルバム『What's Going On』のサウンドに影響を受けた作品は数多く有れど、本作ほど『What's Going On』をまんま再現しようとしたアルバムは他にない。
特にアルバムの1~2曲目、「After Hours」から「Heaven On Earth」への組曲的な流れは、そのまま「What's Going On」~「What's Happenning Brother」の流れを思い起こさせる。滑らかにストリームを描く、気持ち良過ぎるメロウ・ソウル。

hang on in thereM-3
Where's The Soul Of Man? / Mike James Kirkland
 from『Hang On In There』

このアルバムも『What's Going On』が産み落とした裏ニュー・ソウル名盤。ジェイムス・ギャドソン、アル・マッケイ、レイ・ジャクソンら、ワッツ103rdストリート・リズム・バンドによる演奏もグルーヴィーで素晴らしいが、特にアルバムA面はメッセージ性が強く、その影響はサウンドの踏襲だけに留まらない。
この「Where's The Soul Of Man?」のメロウで開放的な空気感は、まさに「What's Going On」的。

soul isM-4
What's Going On/Ain't No Sunshine / Bernard Purdie
 from『Soul Is...』

バーナード・パーディーは「What's Going On」にビル・ウィザーズ「Ain't No Sunshine」を取り込むカタチで技アリのカバー。非常に気持ちいいジャジーなメロウ・グルーヴで、「What's Going On」カバーの中でもかなり好きな曲。
この『Soul Is...』というアルバム自体も、いつになくメロウでソウルフルな仕上がりで、アルバム1枚通してニュー・ソウルからの影響を感じさせる。

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Sensitize / Roy Ayers Ubiquity
 from『Change Up The Groove』

ニュー・ソウルの動きにシンクロする形で70年代前半に傑作を連発したロイ・エアーズ。
『Change Up The Groove』収録の「Sensitize」は、壮大に広がっていく開放的な空気感が「What's Going On」なメロウ・グルーヴ。後半になってようやく入ってくるヴィブラフォンも堪らない気持ち良さ。

climaxM-6
What's Going On? / Ohio Players
 from『Climax』

オハイオ・プレイヤーズによる「What's Going On?」は、個人的にはやはりピート・ロック&CLスムーズ「Lot's Of Lovin'」ネタとして記憶に残っている。オハイオらしく、どこか淫靡なムード漂うメロウ・グルーヴに仕上がっている。
このアルバム『Climax』はCD化されていないが、英エイスからリイシューされた『Pain』のボーナストラックとしてこの曲も収録されている。

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Give The Little Man A Great Big Hand / William DeVaughn
 from『Be Thankful For What You Got』

フィリー産ニュー・ソウルの傑作と言えばこのアルバム。
大ヒットしたアルバム・タイトル曲をはじめ、柔らかなメロウ・ソウルにたっぷり満たされた作品だが、ここではアルバム・オープナーの「Give The Little Man A Great Big Hand」を。歌の弱さはマーヴィンとは比べるべくもないが、瑞々しくシルキーなグルーヴが「What's Going On」な気分の名曲。

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Fancy Pants / Jackie Mittoo
 from『Macka Fat』

ジャマイカのキーボード・キング、ジャッキー・ミットー。
本作『Macka Fat』は、コワモテなジャケットとは裏腹に、ユルいヴァイブでチル三昧な極楽盤。そこに収録された「Fancy Pants」は「What's Going On」のカバーで、ユルユルのオルガンに気持ちよく揺らされる、らしい1曲。
しかし、何故ファンシー・パンツなのか?

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Silky Soul / Maze featuring Frankie Beverly
 from『Silky Soul』

フランキー・ビヴァリー率いるメイズは、マーヴィンとの縁浅からぬバンド。
地味ながら良質なソウル・ミュージックをつくり続けた人たちだが、なかでもこの「Silky Soul」は、「What's Going On」のムードを80年代末に再現してみせた、マーヴィン・トリビュートの決定打と言える名曲。
個人的には、マーヴィンよりもダニーよりも先にこの曲を聴いたこともあり、思い入れも一入。

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What's Going On / Johnny "Hammond" Smith
 from『What's Going On』

ハモンド・オルガンの名手、ジョニー"ハモンド"スミス。
一時はミゼル兄弟に魂を売り(?)、エレピに転向し傑作『Gears』を残したが、それでも自分の名前からハモンドの看板を下ろすことはしなかったぐらいだから、この楽器に対する執着が窺い知れる。
「What's Going On」のカバーでももちろん、あの温かいハモンドが聴こえてくる。メロウでブルージー、くすんだ音色がじんわり沁みてくる。

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Sausalito Calling / Camelle Hinds
 from『Soul Degrees』

イギリスのファンク・バンド、セントラル・ラインのベーシスト、カメール・ハインズのソロ1stアルバムとなる本作は、本国ではリリースされなかった不幸な作品だが、個人的には非常に気に入っているアルバム。
マーヴィンをはじめ、カーティス・メイフィールドやリロイ・ハトソンなどを連想させる、70年代のニュー・ソウル、メロウ・ソウルを真空パックしたような作品。なかでもこの「Sausalito Calling」は、「What's Going On」と「I Want You」と「Give Me Your Love」のいいトコ取りしたような、90年代メロウ・グルーヴ随一の名曲。ハインズの瑞々しく若々しいファルセットも素晴らしい。

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What's Going On / David T. Walker
 from『David T. Walker』

マーヴィンの74年の『Live!』でも、「What's Going On」を演奏したデイヴィッド・T・ウォーカー。
自身のリーダー作でもしっかりカバー。と言うか、本作は71年なので、こちらの方が先。『Live!』のハイライトと言える、「What's Going On」での黄金のメロウ・ギターは、もちろんここでも十分に堪能できる。官能のギター・フレーズでぐっしょりと濡れた「What's Going On」、素晴らしい。