beats rhymes and life
Beats, Rhymes And Life / A Tribe Called Quest
 Jive '96 

『People's Instinctive Travels And The Paths Of Rhythm』で鮮烈にデビュー、 『The Low End Theory』『Midnight Marauders』とエポック・メイキングなクラシック・アルバムを連発したア・トライヴ・コールド・クエスト。3年ぶりとなる4作目への、当時のシーンの期待の高まりは異様なものがあった。
しかし、リリースされた本作『Beats, Rhymes And Life』に対するファンの反応は複雑なものだった。賛否両論、と言うか、否定的な評価の方が多かったように記憶している。

否定的な見方は概ね2つの意見に集約される。
ひとつは、プロダクションの変化。前3作は基本的にQティップが大部分の制作を担っていたのが、本作からはQティップ、アリに、Jディラ(当時はジェイ・ディー)を加えた3人のチーム=ジ・ウマーによるプロデュースとなった。洗練されたサンプリング・センスと、ビートとラップとの奇跡的なマッチングの妙が、ATCQサウンドにマジックをもたらしていたが、本作での、ソリッドで機械的、硬質な縦割りビートは、初めて聴いた時はかなりショックだった。

プロダクションやサウンドの変化は、当然ディラの存在に負う部分が大きい。初めてディラの名を意識したのは、ファーサイドの2nd『Labcabincalifornia』だった。無名の新進プロデューサーのいきなりの抜擢で、この時はまだ幾分ネタ感の強いサウンドだったが、Qティップと組んだ本作ではサウンドは更に尖鋭化している。
その最たる例が、アルバム1曲目の「Phony Rappers」。コレを聴いて仰け反ったファンも多かっただろう。このカッチカチに硬いビート、何とも言えない不穏なムードは、今では何の違和感もなく耳に馴染むが、当時はその異質な感じに戸惑った。少なくとも、当時のATCQのファンが求めるモノとは違っていた。

アルバムは概ねこの路線で統一され、鼓膜を震わすドープなビートの「Get A Hold」、硬いスネアの音が耳に刺さる「Motivators」「Jam」、ルース・コープランド「Suburban Family Lament」のティキ・フルウッドによるドラム・ブレイクをループした「Crew」、「The Pressure」はファンカデリック「Get Off Your Ass And Jam」の他に、自身の「Jazz(We've Got)」「Electric Relaxation」などをサンプリング。
クール&ザ・ギャング「N.T.」のホーンをサンプリングした「Mind Power」、催眠的なベース・ラインがグルーヴィーな「The Hop」、乾いたギター・リフのループがザラついたムードを醸す「Keep It Moving」、マンゼル「Midnight Theme」のドラムをサンプリングしたファイフのソロ「Baby Phife's Return」、JB「Funky Drummer」声ネタの「Separate/Together」、オハイオ・プレイヤーズ「Pain」、JB「Make It Funky」使いの「What Really Goes On」、幻惑的なムードの「Word Play」など、どの曲も当時としては野心的でリスナーを突き放したが、今聴くと傑作としか言いようがない。

もうひとつの否定的な要素は、フックに女性シンガーをフィーチャーしたR&B寄りの楽曲の存在だ。「1nce Again」「Stressed Out」の2曲がそれにあたるが、前者はタミー・ルーカス、後者はフェイス・エヴァンスと、いずれも当時引っ張りダコの客演女王を起用している。たしかに、らしくないと言えばらしくないのだが、アルバムのなかではいいアクセントになっているように思う。