i just cant help myself
I Just Can't Help Myself / Terry Callier
 Cadet '73 

テリー・キャリアーのカデット3部作の3枚目、『I Just Can't Help Myself』。
『Occasional Rain』『What Color Is Love』、そして本作と、ソウル/フォーク/ジャズを自在に行き来する音楽性はいずれの作品にも共通しているが、3枚それぞれ微妙に色合いが異なるようにも聴こえる。『Occasional Rain』はシンプルな編成のフォーク・ソウル作だが、『What Color Is Love』はソウル、ジャズ色が増し、特にニュー・ソウルとの親和性が強く、チャールズ・ステップニーによる壮麗なストリングス・アレンジも冴えていた。
そして本作『I Just Can't Help Myself』は、プロデュースはチャールズ・ステップニーに加え、ラリー・ウェイドとキャリアー自身。リチャード・エヴァンス、フィル・アップチャーチ、ルイス・サタフィールド、モリス・ジェニングス、ドン・マイリックら、シカゴの名手たちが脇を固める。よりメロウな風通しのいいソウル/ジャズで、3作の中では一番聴きやすいアルバムだと思う。

特に頭の3曲は、同じシカゴのカートムのサウンドにも通じるようなメロウ・ソウルで、非常に気持ちいい。「(I Just Can't Help Myself) I Don't Want Nobody Else」は、柔らかなグルーヴとキャリアーの温かいヴォーカルに包まれる美しいメロウ・ソウル。「Brown-Eyed Lady」は終盤に向けて昂揚していくメロディとアレンジ、そしてここでもキャリアーの歌が感動的なミディアム・ナンバー。「Gotta Get Closer To You」はグルーヴィーに疾走する人気曲。

4曲目以降は、グッとジャジーなムードで展開。スキャットを交えまったりとカバーしたデューク・エリントン「Satin Doll」、豪奢なストリングス・アレンジを施したオーケストラル・ソウル「Until Tomorrow」、ステップニーらしい荘厳なストリングスのなか、ギター、エレピ、パーカッション、ヴォーカルが生々しく響くフォーキー・ジャジー・ソウル大作「Alley-Wind Song」、足早に駆け抜けるスキャットが素晴らしいジャジー・ナンバー「Can't Catch The Trane」、ラストは重いムードのブルージーな「Bowlin' Green」。