make it funky
Make It Funky The Big Payback : 1971-1975 / James Brown
 Polydor ’96 

『Foundations Of Funk : A Brand New Bag 1964-1969』『Funk Power 1970 : A Brand New Thang』に続く、JBのクロニクル・シリーズ第3弾『Make It Funky The Big Payback : 1971-1975』。
ブーツィー脱退後の71年以降、70年代前半のJBの仕事を2CDにコンパイル。

ブーツィー在籍時にファンク革命の頂点に達したJBだが、ブーツィーらが離れた後は、それまでの壮絶なまでにタイトなスーパー・ヘヴィー・ファンク・サウンドから、よりゆったりとした間合いのグルーヴへとシフト。この変遷を、徐々に失速していったと見做すこともできるだろうが、円熟の域に達したと捉えることも可能だろう。

この時期で特筆すべきは、やはり何といってもドラムスのジョン"ジャボ"スタークスとベースのフレッド・トーマス。このリズム・セクションが繰り出す、ズッシリと太く重く、ジワジワとウネるファンク・グルーヴは、ブーツィーを擁した頃とはまた異なる魅力に溢れている。
また、フレッド・ウェズリーが音楽監督を務め、デイヴ・マシューズをアレンジャーとして起用するなど、音楽的な幅の広がりも感じられるようになった。
もうひとつ、2枚組連発の大作志向もこの時期の特徴。さすがに楽曲の水増し感は拭えず、アルバムとしての評価は難しい作品も多いが、しかし楽曲単位ではまだまだ傑作を量産。70年代前半のJBの美味しいところだけを選り抜いた優れた編集盤だ。

収録全26曲のうち、「Hot Pants」「Make It Funky」「There It Is」「The Payback」「Papa Don't Take No Mess」あたりは、黒人音楽史に残るファンク遺産級の名曲。
「Hot Pants」はギター・リフがファンキーなシングル・ヴァージョンで、個人的にはこっちの方が好き。「Make It Funky」はパート4までしっかり収録。「The Payback」「Papa Don't Take No Mess」は凄味たっぷりのマッシヴなファンクで、この時代の到達点と言えそう。
「Escape-Ism」「I Got A Bag Of My Own」「I Can’t Stand It ”76”」「Funky President(People It's Bad)」といった秀作ファンクの数々も流石の聴き応えで、Godfather Of Soul、Minister Of New New Super Heavy Funk の異名が伊達ではないことを有無を言わさず証明。

このシリーズ恒例の未発表曲・未発表ヴァージョンも大盤振る舞い。ルーズなグルーヴが脳ミソ溶解しそうな気持ちよさの「Don't Tell It」は8分超のロング・ヴァージョン。「Down And Out In New York City」はイントロが長めの長尺版。「Make It Good To Yourself」は『Damn Right I Am Somebody』の曲間で流れてていた激ファンキーなインタールドの完全版で、コレには興奮必至。
「Mind Power」「Cold Blooded」はよりタイトな別ヴァージョン、「World Of Soul」は「People Get Up And Drive Your Funky Soul」のテンポを早めたようなカッコいいファンク・チューンで、コレもなかなかの掘り出しモノ。

ディスク2の終盤、75年録音の音源になってくると、さすがのJBもパワー・ダウンしてきた感は否めないが、「I Feel Good」のリメイク版とか、結構面白く聴けたりする。ラストは71年アポロ・シアターでの未発表ライヴ音源「Hot Pants Finale」で昇天。