for pleasure
For Pleasure / Omar
 RCA '94 

UKの自作自演派アーティスト、オマーの3rdアルバム『For Pleasure』。
1st『There's Nothing Like This』、2nd『Music』の2枚はUKのインディペンデント・レーベル、トーキン・ラウドからのリリースだったが、本作では大メジャーのRCAに移籍しついに全米進出を果たす。制作体制にも変化があり、約半数の楽曲はこれまでどおりオマーがほぼ独力で作曲/演奏/プロデュースを賄うが、残り半数では外部のプロデューサー、ソングライター、ミュージシャンを起用している。
なかでも驚きなのは、70年代ソウル・ミュージックのレジェンドであるラモン・ドジャー、レオン・ウェアとのコラボレーション。オマーにとって憧憬の対象である偉人たちとの邂逅は、本作の大きなテーマのひとつだったのだろう。また、レオンにとっても、この後のカメール・ハインズ『Soul Degrees』(「How Are You My Dear Today」)、マックスウェル『Urban Hang Suite』(「Sumthin' Sumthin'」)などの若手との積極的な関わりのキッカケとなったのかもしれない。

こういった制作環境の変化は、オマーの音楽にも微妙な変化をもたらしたようにも思う。前2作のような、レゲエやラテン・ミュージックの要素も消化し、アシッド・ジャズとの親和性も残したUK的なストリート・ソウル感覚が本作では影を潜めているように感じるし、US市場やもっと広い層を睨んで、より普遍的なソウル・ミュージックを目指したのだと思える。
とは言え、オマーがUSメイン・ストリームのR&Bのようなサウンドをやるハズもなく、本作も彼にしか成し得ないオリジナリティ溢れる独特な音楽になっている。トニ・トニ・トニ『Sons Of Soul』やミシェル・ンデゲオチェロ『Plantation Lullabies』などともに、後のニュー・クラシック・ソウルの先駆けとなった作品とも言えるのかもしれない。

本作において主軸となるのは、システムのデイヴィッド・フランクとの共同作業で制作された楽曲だろう。
「I'm Still Standing」は捏ね繰り回すような歌唱とメロディーがオマー節全開なミドル。「Saturday」「Keep Steppin'」も同傾向のファンキーでグルーヴィーなナンバー。なかでは最もUS産R&B寄りな「Need You Bad」も含め、これらの曲はいずれもキーボードがグニャグニャと絡む70年代前半のスティーヴィーのグルーヴを彷彿とさせる。

ラモン・ドジャーとの共作曲「Outside」は、琴線に触れるメロディーが美しいクラシック・ソウルの格調漂う名曲。エド・グリーン、ネイサン・イースト、ソニー・バーク、レイ・パーカーJrら名手たちによるバッキングももちろん素晴らしい。アルバム冒頭の短いイントロダクション的な「My Baby Says」もラモンとの共作。これはフル・ヴァージョンで聴いてみたかったところ。
レオン・ウェアとの共作・共同プロデュースとなる「Can't Get Nowhere」は、ギラギラしたシンセに抑制されたファンクネス宿るミッド・グルーヴで、何となく「Body Heat」あたりの作法を思わせる。

その他、アルバム中必ず1曲はあるジャジー・バラードの「Little Boy」、ファンキーな「Confection」、楽しげなムードの「Magical Mystical Way」、グルーヴィーな「Making Sense Of It」「For Pleasure」、ウネるグルーヴに揉み解される「It's All About」など、先に挙げた曲に比べるとインパクトは弱いが、オマーのファンであれば十分に楽しめる佳曲揃い。