black caesar
Black Caesar / James Brown
 Polydor '73 

70年代前半は数多くのブラックスプロイテーション・ムービーが制作され、アイザック・ヘイズ『Shaft』や、カーティス・メイフィールド『Superfly』など、サウンドトラック・アルバムも大ヒット。ニューソウルともリンクしたこの動きに、JBは当初あまり関心を示さなかったようで、依頼が舞い込んだ黒人版ゴッドファーザー的な映画『Black Caesar』のサントラ制作も、いつもの調子で既発曲を寄せ集めて済まそうと思っていたよう。
しかし、ここで俄然ヤル気を出したのがバンマスのフレッド・ウェズリー。好きなようにやってよしとJBから言われていたのかもしれないが、日頃溜まったウップンとクリエイティヴィティを爆発させるかのようにオリジナル楽曲を制作。その出来の良さにJBもようやく本腰を入れ、完成させたのが本作。最初はノリ気でなかったJBも、本作の出来には満足したようで、味をしめて同年にはサントラ2作目『Slaughter's Big Rip-Off』をリリースするフットワークの軽さはさすがJB。

本作はヴォーカル入りの曲とインスト・ナンバーが半々というサントラらしい構成。演奏はもちろんJB'sだが、一部の楽曲はデイヴィッド・マシューズの手引きと思われるニューヨークのスタジオ・ミュージシャンを起用。
オープニング・ナンバーの「Down And Out In New York City」は、おそらく映画のテーマ的なナンバーと思われるが、それに相応しい緊張感漲るブラックスプロイ感横溢のファンク・チューンで、JBのヴォーカルも気合いたっぷり。JBが歌っているのは他に、ユルめのミドル「The Boss」と、タイトなファンク・ナンバー「Make It Good To Yourself」、バラードの「Mama's Dead」、ブルージーな「Like It Is, Like It Was」の、計5曲。リン・コリンズがヴォーカルを取る「Mama Feelgood」は弩ファンキーな逸品。

インスト・ナンバーでは、ジャボ・スタークスとフレッド・トーマスの繰り出す重いグルーヴに執拗なギター・リフとキーボードがクールに絡むミッド・ファンク「Blind Man Can See It」がやはりカッコいい。 『In The Jungle Groove』2003年版に追加収録されたこの曲のロング・ヴァージョンは必聴。
軽やかなフュージョン調「Sportin' Life」、暗闇に忍び寄るような雰囲気の「Dirty Harri」、ビッグ・バンド的な「Chase」は、いかにもサントラっぽい風情。「White Lightning(I Mean Moonshine)」もストリングス入りのサントラっぽい曲だが、リズム・セクションは相変わらず屈強なグルーヴを紡いでいる。