lights out
Lights Out : San Francisco Voco Presents The Soul Of The Bay Area
 Blue Thumb '72 

サンフランシスコのラジオDJのヴォコなる人物が、地元ベイエリアをレペゼンすべくミュージシャンを集め録音した2枚組LP。
主な参加メンバーは、タワー・オブ・パワー、リディア・ペンス、グレッグ・エリコといったベイエリア・ファンク勢を中心に、ハーヴィー・メイソン、ジョン・リー・フッカー、ニール・ショーン、クリフォード・コールター、ポインター・シスターズ、ダン・ヒックスなど多岐に渡る。

ファンク好きとしては、やはりタワー・オブ・パワーが演奏する4曲に注目。「Mahdi(The Expected One)」はラテン・フィールを塗したグルーヴィーなジャズ・ファンク・チューン。「Cleo's Back」は泥臭く重いグルーヴがブルージーにウネるミッド・ファンク。「Loves To Do It」は当時のTOPのリード・シンガー、リック・スティーヴンスに加え、リディア・ペンス、リンダ・ティレリーなど4人のヴォーカルが入り乱れるファンク・チューン。「Dead」はリディアがリードを取る。いずれも全盛期直前のTOPのグルーヴィーな演奏が炸裂する傑作ベイエリア・ファンクで、これは堪らない。また、4曲ともハーヴィー・メイソンがドラムスではなくタンバリンで参加している。

その他、ジョン・リー・フッカーのブルース「Lights Out」、クリフォード・コールターのジャズ・ナンバー「Voco」、シルヴェスター&ホット・バンドの「Hey, That's No Way To Say Goodbye」「Why Was I Born」はグレッグ・エリコとニール・ショーンが参加(後者にはポインター・シスターズも参加)のゴスペル・テイストのバラード。これらの曲も十分に楽しめる内容になっている。

問題はD面の3曲。ファディル・シャヒーン&キャスバー・バンドの2曲「Brother Antrainik」と「Dina」は、ゴリゴリのインド音楽で、この手の音楽にはまったく馴染みがないので、何と評したらよいか分からない。後にスライ&ザ・ファミリー・ストーンに参加するヴァイオリニスト、シド・ペイジがメンバーに名を連ねるダン・ヒックス&ヒズ・ホット・リックス「20/20 Vision」は、フォーク/カントリー・サウンドで、ファディル・シャヒーンよりは耳馴染みよいが、正直あまり興味が湧かない。

ファンク/ソウル好きはD面は聴けないが、人種の坩堝ベイエリアの雑多な音楽シーンを象徴するアルバムとして、なかなか興味深い作品ではあるし、TOPの4曲だけで十分にお釣りがくる。