in between jobs
In Between Jobs / Lynden David Hall
 Random '05 

リンデン・デイヴィッド・ホールが遺した3枚のアルバムはどれも傑作だが、一番人気の1st『Medicine 4 My Pain』や、個人的には最高傑作だと思っている2nd『The Other Side』と比べて、最終作となる本作『In Between Jobs』はやや地味な印象は拭えず、多くのR&Bリスナーからは忘れ去られてしまっているのかもしれない。
所属レーベルのクールテンポの消滅の煽りを受け、前作から5年のインターバルの後リリースされた本作。この時、既に病魔に蝕まれながらのレコーディングだったと思われ、翌2006年に31歳の若さで亡くなってしまうのだが、そんな暗い翳など感じさせない充実した内容の作品。

ディアンジェロと同じ歳に生まれたリンデンが、ディアンジェロから直接的に影響を受けたハズもなく、両者に共通するファルセットと地声の間を縫うように行き交うヴォーカルは、世代的にプリンスからの影響が濃厚だし、この手のソウル・ヴォーカルのルーツであるマーヴィン・ゲイやアル・グリーンを範としている。
また、生音を基調としながらもヒップホップを通過したサウンドは、両者の処女作の時点では近しい方向性ではあったものの、2ndアルバムでは両者の表現は大きく乖離する。黒々としたファンクネス滴る『Voodoo』に対し、『The Other Side』は陽性のたおやかなソウル・ミュージックだった。本作『In Between Jobs』は、そこからもう少し1st寄りに戻したような感触で、強めのビートでクールな風情を漂わせるが、より成熟と余裕を感じさせる。

アルバム・オープナーの「Don't Hide Your Heart」から、これぞリンデン・デイヴィッド・ホールと言いたくなるあのサウンドと歌唱に瞬殺される。「Stay Faithful」はミュージック「Just Friend(Sunny)」みたいなネオ・ソウル・ナンバーだが、曲良し歌良しで文句なし。アルバム・タイトル曲「In Between Jobs」はホーンのサンプリングとトラックがうまく噛み合った、センスの光る曲。
らしくないタイトルの「Pimps, Playa's And Hustlers」は、ストリートのヒリヒリした空気を感じさせるような秀逸なミドル。「Day Off」は太いベース温かみのあるグルーヴを生むミディアム・ナンバー。「Still Here With You」はドラムとアコギ、それに絡むヴォーカルが生々しいソウルを醸す。
「Eventually」は浮遊感のあるトラックにラップと多重録音ヴォーカルが乗る、ドゥウェレやスラム・ヴィレッジを思わせるネオ・ソウル。「Memories And Souvenirs」は不思議な音色のリズムがクセになるミドル・チューン。「(If You Ain't)Comfortable」は硬質でループ主体のトラックのR&Bナンバー。ラストの「Blessings」はテンダーなムードのスロウ。

できればもっと彼の曲を聴きたかったな。