lost and found
Lost And Found : Hip Hop Underground Soul Classics / Pete Rock
 BBE '03 

94年の『The Main Ingredient』を最後に、C.L.スムーズとのコンビを解消したピート・ロック。プロデューサー業に本腰を入れるべく、エレクトラ傘下にソウル・ブラザー・レコーズを設立、そこから新人アーティストを自らのプロデュースで次々と送り出す計画だった。
が、結果的には、ピートの実弟グラップ・ラヴァを含む4人組グループ、INIのシングル「Fakin' Jax」をリリースしたのみで、このレーベルは頓挫。アルバム・リリースするに足る十分な楽曲を録音・完成させていながら、エレクトラからサポートが得られなかったのか、レーベル閉鎖によりこの時の音源はお蔵入りとなってしまった(メンバーのロブOのソロ・アルバムもお蔵入りに)。ピートはその後、98年にソロ・アルバム『Soul Survivor』をリリースするまで、長きに渡り活動の停滞を余儀なくされてしまった。

本作『Lost And Found : Hip Hop Underground Soul Classics』は2003年のリリース。96年前後にソウル・ブラザーからリリースが予定されるも幻と消えた2枚のアルバム、INI『Center Of Attention』と、ディーダ『The Original Baby Pa』を収めたもの。ピートのプロダクションが成熟を極めていた、正に失われた黄金期のサウンドをたっぷりと堪能できる逸品。
特に『Center Of Attention』は、ピート・ロック・サウンドの頂点。96年当時、ハニー・ドリッパーズ「Impeach The President」のビートをサンプリングしたシングル「Fakin' Jax」の素晴らしさに衝撃を受け、アルバム・リリースを期待していたのだが、7年経ってようやく聴くことができた本作には、「Fakin' Jax」級の楽曲がゴロゴロ転がっていて驚愕した。

ガシガシのビートの上でヴィブラフォンが揺らめく「No More Words」、クールな昂揚感が鳥肌モノの「Step Up」、ピアノ・サンプルが緊張感を煽る「Think Twice」、ロータリー・コネクション「Memory Bnad」の幻想的なフレーズをサンプリングした「The Life I Live」、Qティップとラージ・プロフェッサーのラップをフィーチャーした「To Each His Own」、デイヴィッド・T・ウォーカー「Lay Lady Lay」の円やかなギター・ループが堪らなく気持ちいい「What You Say」、初期のピート・ロック・サウンドを思わせるファンキーさが嬉しい、「Fakin' Jax」のシングルB面曲だった「Props」、物悲しげなピアノ・ループが凍てついた荒涼とした雰囲気を醸す「Center Of Attention」、フェラ・クティ「Water No Get Enemy」のキーボード・サンプルが耳にこびりつく「Grown Man Sport」など、名曲ばかり。INIの面々のレイド・バックしたルーズなノリのラップも耳馴染みよく、ピート自身も合いの手やらラップやらでいつも以上に前に出てきている印象で、本作に相当な意気込みと自信を漲らせていたことが分かる。

もう1枚の『The Original Baby Pa』も秀作で、これももちろんピート・ロック全面プロデュース。
ディーダのラップはやや一本調子なきらいはあるが、オーソドックスなスタイルで悪くない。こちらはソロMCということもあってか、『Center Of Attention』よりもビートの立ったアグレッシヴな曲が目立つように思う。女性シンガーを起用したR&Bテイストの「How I'm Livin'」みたいな曲もあったりと、楽曲に幅を持たせたアルバム構成となっていて飽きさせない。