シンコー・ミュージックの名物ディスク・ガイド・シリーズ、『ディスク・コレクション』に、新たなラインナップとしてファンク編が今年9月に刊行された。

disc collection funk

このディスク・コレクション・シリーズには先に、『グルーヴィー・ソウル』『レア・グルーヴ』編が出ていて、その2冊も所有しているが、もとよりこの手のディスク・ガイドの類が好きでもあり、またファンクをメインにしたブログをやっている身としては、今回のコレを買わないワケにはいかない。
監修は『グルーヴィー・ソウル』と同じく、元ミュージック・マガジン編集長の高橋道彦さん。レヴュアーには丸屋久兵衛さん、金子穂積さんらの名前もあり、これはマニアックかつ初心者への間口も広いファンク・ディスク・ガイドの決定版になるのでは、と読む前から期待が膨らんだ。

全10章からなっており、各章のタイトルも、”FUNKamental Artists” ”O-H-I-O The Land Of FUNK” ”Take'Em To The Bridge! The Golden Years Of FUNK” "Mumbo Jumbo FUNK Bomb : New Orleans Funk + Washington DC's Go-Go"など、いちいち気が利いている("Mothership Collection : Cosmic FUNK"だけは個人的にはイマイチかな)。

内容としては、まず、第1章が”3 FUNKingdoms+Prince”。このタイトルが、ファンク・バンドの栄枯盛衰を王朝の興亡に準えたあの名著『ファンク 人物、歴史そしてワンネス』へのオマージュなのかどうかは分からないが、ファンクのディスク・ガイドの冒頭で、JB、スライ、Pファンク、プリンスという革新ファンクの系譜(という表現は出てこないが)にスポットを当てるというのは、全くもって正しい。
しかし、周辺作品の範囲をやや広げ過ぎなのでは、と思う。スライ周辺であれば、グラハム・セントラル・ステーションや、グレッグ・エリコがプロデュースしたベティー・デイヴィスの1stは分かるが、サンタナやメイズ、トニ・トニ・トニなんかは、別にベイエリア・ファンクだけで章立てした方がよかったのでは。また、プリンス周辺として、直接的に関係のないジェッツやジャム&ルイス関連を含むのも、何か違うと思ってしまう。ファンクの枢軸たる4者の、まず聴くべき王道のファンク作品を集めた最初の章にジェッツとか入っていると、ビギナーの誤解を招きそう。

主要なファンク作品は概ね抑えられていると思うが、やはり『グルーヴィー・ソウル』とのダブりを避けるため、意外に重要作が抜けていたりする(オハイオ・プレイヤーズ『Honey』、リック・ジェイムス『Come Get It』など)。ただし、重複掲載の作品も多数ある(巻末のあとがきで、高橋さん自身もそのあたりの扱いをどうするか苦慮されたと述べられている)。アイズレー・ブラザーズ『Live It Up』やブーツィーズ・ラバー・バンド『Srretchin' Out In』、キャメオ『Feel Me』など、『グルーヴィー・ソウル』でも漏れ、この『ファンク』でもスルーされてしまったファンク名盤も少なからずある。個人的には、重複を気にせず重要作は出来るだけ掲載し、ファンク・ディスク・ガイドの決定版を目指してほしかった。

一方で、ファンク・アルバムというには無理がありそうな作品も結構掲載されている。サウスサイド・ムーヴメントやマグナムが載っていないのに、先に挙げたジェッツとか(いやジェッツ嫌いなワケではなく、「Rocket 2 U」とか当時好きでした)、ジョディー・ワトリーとか(いや「Friends」最高だけれども)、この辺が載っているのは何かバランス悪いか。また、マーヴィン・ゲイは『Trouble Man』『Midnight Love』が載っているが、スティーヴィー・ワンダーはコラムで1頁割いているもののアルバム・レヴューは無しなのは何故だろう。『Talking Book』や『Innervisions』の方がファンクのディスク・ガイドには相応しいような。

以上で述べたことは、あくまで主観、自分自身のファンク観に基づいたものなので、そのように思わない方のほうが寧ろ多いのかもしれないけど、以下の3点は明らかな間違い。

・ジャケットとタイトルはサン『Sunburn』だが、レヴューの内容は『Sun Power』
・ジャケットとタイトルはスレイヴの2nd『The Hardness Of The World』だが、レヴューの内容は1stアルバム
・リー・ドーシー『Ride Your Pony - Get Out Of My Life Woman』と『Yes We Can』のレヴューが同一(レヴューの内容は前者のもの)

誤字脱字や多少の事実誤認は気にならないけれど、これはレヴューの対象自体が違う(サンとスレイヴはジャケットとタイトルのミスだろうが、『Yes We Can』のレヴューはドコ行った?)ので、ちょっとお粗末かも。事前にチェックできなかったのだろうか。


ちょっと否定的な物言いになってしまったけれど、個人的な期待が大き過ぎただけで、おそらく日本語で読めるものとしては前例のないファンク・ディスク・ガイド本なので、それだけでも価値は高い。トーク・ボックスやエロ・ジャケを特集したコーナーも読み物として面白いし、まだ聴いたことのないアルバム、知らなかった作品も数多く掲載されていて、まだまだ聴くべきものはたくさんあるなぁと、ファンクの奥深さを改めて教えられた。10数年ぶりに火が付いたレコード掘りに大いに役立っています。