planet earth
Planet Earth / Prince
 NPG '07 

約10年ぶりのメジャー・リリースとなった2004年の『Musicology』『Batman』以来17年ぶりの全米アルバム・チャート1位を記録した2006年の『3121』と、90年代のこじらせ期から堂々たるオーバー・グラウンドへの帰還を遂げ、第2の黄金期到来を予感させた00年代半ばのプリンス。

『3121』はユニヴァーサルからのリリースだったが、続く本作『Planet Earth』では『Musicology』と同じくソニーに配給を委ねるという、天下の大メジャー・レーベルを天秤にかけるオレ様王子様っぷり。また本作は、 『Diamonds And Pearls』以来のホログラム仕様のジャケットで、こんなどうでもよさそうな所に金をかけるなどやりたい放題。しかも、英タブロイド紙の付録として本作を無料配布するという暴挙(このヤリクチは後の『20Ten』でも踏襲)。
この殿下の傍若無人な振る舞いには、さすがのソニーも激怒したようで(当然です)、イギリス国内での本作の販売を中止したそう。プリンスにも言い分はあるだろうし、ワーナー時代と同様の息苦しさを感じていたのかもしれないが、ワン・ショット・ディールでメジャー・レーベルを股にかけた時代は本作で最後となり、次作からは、写真集のオマケとしてライヴCDを付けてみたり(『Indigo Nitghts』)、スーパー・マーケット・チェーンで3枚組を売ってみたり(『Lotus Flo3er / Mplsound / Elixer』)と、またマイペースな活動へと戻ってしまう。
プリンスが三度メジャーへと舞い戻るのは、驚愕のワーナー復帰劇となった2014年の『Art Offcial Age』 『Prectlumelectrum』のWリリースまで待たなくてはならない。

で、この『Planet Earth』(邦題『地球の神秘』って...)、何と言うか、実にあっさりしたつくり。もう拍子抜けするほどの。凄みたっぷりの歪みまくったダーティー・ヘヴィー・ファンクの「3121」や、1990年以降最高のプリンス・ファンク「Black Sweat」、メイン・ストリームのR&Bをスライ「Thank You」のベースで補強した「Beautiful, Loved And Blessed」など、充実しまくった前作のようなものを期待すると、完全に肩透かしを喰らう。特にファンクが弱く、ストレートなロック・テイスト強めに感じる。これなら新聞のオマケで十分かも...なんて、当時は落胆して何度も聴き込むことをせず放置していた作品。
が、もちろん、音楽のクオリティーは頗る高く(もうこの頃のプリンスは質の高い楽曲をつくるなど造作もないことだったと思う)、殿下退位後に久し振りに聴き返してみて、全然イケるじゃないか、と。プリンスの遺した遺産はすべて大切に聴いていかなくてはと思い知らされたワケで。

本作で特筆すべきは、やはり参加メンバーかと。メイシオ・パーカーやグレッグ・ボイヤーの常連の他、リズム隊の核を担うのは前作からバンドに加わったダンハム夫妻。前作で大フィーチャーされたテイマーは追放され(ツインズの2人は残留)、スーパー・ボールのハーフタイム・ショウでも一緒にステージに立ったシルビーJ、次作の『Elixer』で実質ソロ・デビューとなった殿下の新しいスペオキ、ブリア・ヴァレンティらがバック・ヴォーカルを務める。
他、数曲でシーラEやマイケルB、ソニーTといった、一度は離れたかつてのバンド・メンバー達が前作から引き続き参戦。ソロ作『Soul Sistah』をリリースしたばかりのマーヴァ・キングは約10年ぶりの参加。しかし一番驚いたのは、ウェンディ&リサの参加だ。プリンスと一緒にレコーディングするのは『Parede』以来だろうから、実に20年以上もの歳月を経ての和解。もちろん、殿下が2人に詫びを入れたなんてことはないだろうが、何にせよ、プリンスも歳を取って丸くなったのか、ウェンディとリサもわだかまりが解けたのか。この頃の、2人とシーラを含むこの布陣で出演したTVショウの映像をYoutubeで見ることができる。

アルバム・タイトル曲「Planet Earth」はドラマティックな曲調で、本作の幕開けを盛り上げる。ストレートなタイトルが最高な「Guitar」は、曲調もストレートかつハードな痛快ロック・ナンバー。「Somewhere Here On Earth」はムードたっぷりに濡れるジャジー・スロウ。「The One U Wanna C」もストレートなポップ・ロック・ナンバー。「Future Baby Mama」はメロウに蕩けるR&Bスロウ。アダルトなムードのミディアム・スムーヴ「Mr. Goodnight」は、プリンスはラップ主体で、そこにセクシーな女声ヴォーカルが絡む。
「All The Midnights In The World」は森の朝のような爽やかポップ。本作中唯一ファンキーな「Chelsea Rodgers」は、シルビーがメインで歌う王道ディスコ・ファンクで、プリンスとしては異色曲だが文句なく楽しくノリノリ。「Lion Of Judah」はタイトル及び歌詞は宗教臭いが、これもストレートでシンプルなロック・チューン。ラストの「Resolution」も軽やかなポップ・ロックで、あっさり余韻を残さずアルバムは終わる。