sly
70年代のファンク・バンドで、スライの影響を受けていないバンドなどいない。
後続のファンク・バンドの多くは『Stand!』や「Thank You」のグルーヴが激しく躍動する熱いファンクをフォローし、また『暴動』のダークで重いファンクを取り入れる者も少なからずいた。レア・グルーヴやヒップホップ/クラブ・ミュージック方面から『Fresh』が再評価され、多くの若いクリエイターを刺激したりもした。
なので、スライの影響下にあるミュージシャンは星の数ほどいるのだが、その中でも個人的に好きなアーティスト、好きな楽曲を12曲選んだ。
が、とても12曲では収まらなかったので、マイルス・デイヴィスやハービー・ハンコックなどジャズ方面は泣く泣く選外とした。またスライ直系のグラハム・セントラル・ステーションや、ファミリー・ストーン人脈と関わりのある人たち(ベティー・デイヴィス)など、影響関係というよりも当事者に近い人たちは外した。
以下、リリース順。

funkadelicM-1
Mommy, What's A Funkadelic? / Funkadelic
 from 『Funkadelic』

JB、スライと並ぶファンク偉人に数えられるジョージ・クリントンも、初期は相当にスライの影響下にある。記念すべきファンカデリックの1stアルバムの冒頭を飾る「Mommy, What's A Funkadelic?」の奇怪で禍々しいサイケデリック・ファンクは、 『A Whole New Thing』のサウンドに、スライに先駆けて『暴動』的な禍々しくダウナーなファンクを持ち込んだかのよう。演奏しているには実はファンク・ブラザーズだというのも興味深い。
この後もクリントンはスライ的な曲をいくつか出しており、パーラメント『Up For The Down Stroke』収録の「The Goose」なんかは、まんま『暴動』なリズムボックス・スロー・ファンクだったりする。

this is beginningM-2
This Is The Beginning / Leon's Creation
 from 『This Is The Beginning』

ジャケットのメンバー・フォトからして、もうファミリー・ストーン感丸出しなサンフランシスコの7人組バンド、レオンズ・クリエーション。本作のリリースは70年だが、彼らが目指しているのは67~68年頃のファミリー・ストーンで、特に『Dance To The Music』を熱心に聴いてきたと思わせる。
このアルバム・タイトル曲は、ほとんどスライなファンキーでロックなサウンドで、リーダーのレオンのヴォーカルもスライ調。こういう、スライに憧れたバンドは当時の西海岸にはたくさんあったんだろうなと思わせる。

understandingM-3
Woman's Gotta Have It / Bobby Womack
 from 『Understanding』

『暴動』セッションに参加したボビー・ウォマックは、この時期に自身の作品でもスライに触発されたような曲をやっている。
ひょっとするとスライ自身も参加している説もある『Communication』のタイトル曲がその最たる例だが、次作『Understanding』収録のこの大名曲「Woman's Gotta Have It」のクールなグルーヴは、ウォマック自身がギターを弾いたとされる「Family Affair」と同種のもの。循環するベース・ラインで進行しつつ、サビでは一気にウォマック節が全開となるあたりも素晴らしい。

talking bookM-4
Maybe Your Baby / Stevie Wonder
 from 『Talking Book』

巨人スティーヴィー・ワンダーも、モータウンのヒット歌手から、自分で曲を書きプロデュースする自立したアーティストへと成長を遂げる時期に、スライから大きく影響を受けた。この頃にスティーヴィーが獲得したファンク要素はほとんどスライ経由と言ってよさそうで、『Music Of My Mind』の「Love Having You Around」や「Keep On Running」でスライばりのクラヴィネット・ファンクを披露。続く『Talking Book』からの大ヒット・シングル「Superstition」で完全にスティーヴィー流儀のファンクを確立することになる。
「Maybe Your Baby」はクラヴィネットがグシャグシャと蠢くスロー・ファンクで、スライ臭濃厚なファンク。『暴動』の、特に「Just Like A Baby」や「Poet」あたりを参照したに違いない。一般層にもポップ・アピールする大ヒット作の2曲目にコレを入れてくるあたりに、スティーヴィーの反骨ぶりを見るよう。

hp riotM-5
In The Middle Of Love / H.P. Riot
 from 『H.P. Riot』

ベイエリア出身の10人編成からなる大型バンド、HPライオット。
ジャケットは『Stand!』みたいだし、バンド名にRiot付いてるし、メンバーは黒白男女混合だしで、どこをどう切ってもスライ・フォロワーなファンク・バンドだが、本作で聴けるのは『Stand!』の熱く燃え滾るファンク・ロック・サウンドに、もう一方の地元の雄、タワー・オブ・パワーの分厚いホーン・セクションを擁したような、イイとこ取りベイエリア・ファンク。
アルバム冒頭の「In The Name Of Love」が、まさにそんな感じのカッコいいファンク・ナンバーで、これは堪らない。

inspiration informationM-6
Sparkle City / Shuggie Otis
 from 『Inspiration Information』

シュギー・オーティスは一般的にはブルース系のミュージシャンとしてカテゴライズされることが多いように思うが、自身のアルバムではその枠に嵌らない自由な作風を聴かせてくれる。が、それにしても本作『Inspiration Information』は、ほとんど突然変異のような作品。
リズム・ボックスを大幅に導入した、クールでメロウで暗く澱んだファンク/ソウル・サウンドの本作は、最も忠実な『暴動』フォロワーと呼ぶべきアルバム。ローファイでエレクトロな質感を持つ「Sparkle City」は、「Poet」のようなバウンスするミッド・ファンク。

secretsM-7
Angola, Louisiana / Gil Scott-Heron
 from『Secrets』

ギル・スコット・ヘロンは、おそらく詩人としてのスライに共鳴する部分はあったろうと想像するが、音楽面で特にスライから強い影響を受けたワケではないと思う。
が、1曲だけ、この「Angola, Louisiana」は、ほとんど「Family Affair」っぽい雰囲気とグルーヴを持った曲で、クールで沈んだムードと、都会的でメロウな肌触りを持ったジャズ・ファンクで、これはカッコいい。ギルの低くボソボソと呟くようなヴォーカルも、「Family Affair」のスライのソレを思わせる。知らずに聴いたらスライの曲だと勘違いしてしまいそう。
これは78年の作品だが、70年代前半のスティーヴィーを支えたエンジニア/プログラマーのマルコム・セシルが、ここにも絡んでいる。

sign of the timesM-8
The Ballad Of Dorothy Parker / Prince
 from 『Sign Of The Times』

今更言うまでもないプリンスだが、アーティストとしての姿勢やマルチ・ミュージシャンとしての資質だったり、黒白男女混合のバンド編成やヴィジュアル面などでスライを範とした部分は大きいものの、楽曲・サウンドにおいてあからさまにスライっぽい曲は、実はほとんどないように思う。しかし、この最高傑作『Sign Of The Times』だけは例外的にスライ濃度が高い。
アルバム・タイトル曲や「If I Was Your Girlfriend」など、いずれも『暴動』に繋がるようなダウナーなスロー・ファンクだが、なかでも「The Ballad Of Dorothy Parker」は、ウネるドラム・マシンのグルーヴと妖しげなキーボードが陰鬱なムードを醸す、スライへのオマージュのような曲。

brainchildM-9
Migratenation / Society Of Soul
 from 『Brainchild』

90年代の一時期、最も注目すべきプロデュース・チームだったオーガナイズド・ノイズ。彼らのファンクネス濃厚なプロダクションからも、スライから少なからず影響を受けていることは窺えたが、リーダー・プロジェクトとなるソサイエティ・オブ・ソウルの本作で、そのスライ趣味はより露わになっている。
クールでドロリと澱んだムードに覆われた本作は、多分に『暴動』的だったり、あるいはカーティスっぽかったりするが、そのなかでこの「Migratenation」は終始重々しい雰囲気に支配された『暴動』直結サウンド。
中心人物のひとり、スリーピー・ブラウン主導のスリーピーズ・テーマ『The Vinyl Room』も、スライや70年代ファンク/ソウル臭濃厚。

van huntM-10
Soconds Of Pleasure / Van Hunt
 from 『Van Hunt』

ディアンジェロを筆頭に、多分同世代のアウトキャストのアンドレ3000や、このヴァン・ハントなどは、みなプリンス・チルドレンであり、スライ・チルドレンでもある。
ハントはアーティスト・デビュー前に、ラサーン・パターソンのプロデュースで一部好事家に注目されたが、そこでもスライやスティーヴィーを通過したようなファンクを聴かせていた。 
デビュー作となる本作のそこかしこから、プリンスとスライの匂いが漂ってくるが、「Second Of Pleasure」は個人的に大好物の「Just Like A Baby」調のスロー・グルーヴ。ブルージーなギターにゴリゴリっとクラヴィネットが絡むあたりも堪らない。

waltz of a ghetto flyM-11
Eye To Eye / Amp Fiddler
 from 『Waltz Of A Ghetto Fly』

90年前後にはPファンクのブレーンとして活動したアンプ・フィドラーだが、この人もスライからかなり大きな影響を受けている。
兄弟ユニット、Mr.フィドラーとしてリリースした『With Respect』にも、スライ的な「Cool About It」のような曲を忍ばせていたが、初ソロ作となった本作では一気にスライ趣味が全開。ヴォーカルもスライ風の鼻にかかった声質で、歌い方も相当意識している。多分アンプは『Fresh』がすきなのだろう、「Eye To Eye」はあの唯一無二のグルーヴを、テクノ/ハウスを通過したエレクトロな半生グルーヴで再現を試みている。
次作『Afro Strut』や、スライ&ロビーと共作した『Inspiration Information』にもスライな曲が入っている。

black messiahM-12
1000 Deaths / D'angelo & The Vanguard
 from 『Black Messiah』

アルバムとしては、重くのたうつスロー・ファンクが病みつきになる『Voodoo』が、リリース当時からよく『暴動』を引き合いに出されていたが、曲単位で言えばこの「1000 Deaths」が最もスライ・インフルエンスを感じさせるのではないか。
ドス黒く凶暴なグルーヴの悪魔的な魅力を持つファンク・ナンバーで、『暴動』(の敢えて言えば「Luv N' Haight」)やファンカデリックの初期3作を闇鍋にブッ込んでグツグツ煮詰めたような禍々しさが堪らない。
クエストラヴは『Black Messiah』をして、"俺たちの世代の『暴動』だ" と言ったそうだが、両作のリリース当時の時代背景なども含め、たしかに本作は2010年代の暴動と言える存在なのかもしれない。