black octopus
Black Octopus / Paul Jackson
 East World '78 

ヘッド・ハンターズのメンバーとして、ハービー・ハンコックのファンク探求のボトムを支えたベーシスト、ポール・ジャクソン。
1978年にハンコックのツアーに同行し来日した際に、東芝EMIがジャクソンのソロ・アルバムの制作を企画。2日間のレコーディングで仕上げたのが本作『Black Octopus』。どういった経緯で本作が企画されたのか知らないが、紋付き羽織袴姿のジャクソンが何だかめでたい本作(頭の周りの放射状のベースは蛸の足に見立てたものだろうが、後光が射してるみたいでこれもメデタい気分)、当時はやはり日本のみのリリースだった模様。
この時一緒に来日したハンコックのグループが録音に参加しており、アルフォンス・ムザーン、レイ・オビエド、ベニー・モウピン、ウェブスター・ルイスの他、ハンコックもレコーディングに駆り出されている。全4曲中3曲でジャクソンがヴォーカルを取っているが、亀渕友香と金子マリがバック・ヴォーカルで参加。

アルバムの内容は、全編にわたって黒く硬く太いジャクソンのベースがゴリゴリうねるジャズ・ファンク攻め。本作同様に70年代後半にジャクソンをはじめハンコック周辺~ベイエリア人脈により録音され、2001年になってリリースされたイースト・ベイ・リズム『A Little Love Will Help』に近い感触(イースト・ベイ・リズムの方がストレートなファンクで、こちらの方はジャズ寄りではあるが)。また、イースト・ベイ・リズムと同時期に同じレーベルからリリースされた、ディープ&ダーティーなベイエリア・ファンク未発表曲集『Welcome To The Newsroom』には、レイ・オビエドが大きく関与していたりする(ジャクソンは関わっていないが)。
個人的にこの『A Little Love Will Help』『Welcome To The Newsroom』を非常に気に入っていることもあり、本作『Black Octopus』とこの2作、もちろんヘッド・ハンターズの作品もあわせて聴いて楽しんでいる。

アルバム・タイトル曲の「Black Octopus」は、フリー・ジャズ的な前半部分の後、ブッといベースがグリグリと芯を貫く剛球ジャズ・ファンクの曲後半へと展開。「Funk Times Three」は、しぶといグルーヴがクールに光るミッド・ジャズ・ファンクで非常にカッコいい。
「Burning In The Heat(Of Your Love)」はアーバンなムードも漂うジャジーR&Bな歌モノだが、やはりグルーヴは強力。「Tiptoe Thru The Ghetto」はウォーキング・テンポのリズムに乗せて路地裏を闊歩するようなドス黒いジャズ・ファンク・ナンバー。

2000年にCD再発された際には4曲追加収録されているが、いずれもこの時のセッションのものではない。「T-Bolt」は、95年にベース・マガジンとPヴァインにより企画された3枚連作コンピ・シリーズ、ベース・プロジェクトの2作目『Caught In The Low Beam』(おっ〇いジャケのヤツ)に収録されていた曲。ジャクソンは85年に日本人女性と結婚し、それ以来日本に移住しており、この曲も日本録音で日本人ミュージシャンとのセッション。
「A Little Love'll Help」はイースト・ベイ・リズムのアルバムに入っていた曲の別ヴァージョンで、ジェイムス・リーヴァイ、ブッチ・ヘインズらとのセッション。ヴォーカルが別テイクだったり、そっちにはない音が足されていたりするが、リリース順ではこっちの方が先ということになる。
「Umi Bozu」と「Bow Tie Dress」はいつ頃の録音か分からないが、この2曲は同一セッションの音源。海坊主というタイトルは黒蛸に引っ掛けたのだろうが、録音は日本ではなくカリフォルニア。極太のベースはここでも変わらず。