for the sake of love
For The Sake Of Love / Tashan
 Chaos '93 

89年のテイシャーンの2ndアルバム『On The Horizon』は、当時愛聴していた作品だった。
その当時日の出の勢いだったヒップホップ・レーベル、デフジャムの傘下に設立されたR&B専門レーベル、OBRからは、テイシャーンの他、オラン ”ジュース” ジョーンズ、アリソン・ウィリアムズ、ブラック・フレイムズなどを輩出したが、このレーベルが標榜したのはヒップホップ的なストリート感覚を匂わすリアル・ソウル・ミュージック。なかでもヒップホップと70年代ニューソウルを思わせるメッセージとサウンドが融合した『On The Horizon』は、ディアンジェロ以降のニュー・クラシック・ソウルから5年以上も先駆けていたとも言えるワケで、今思えばなかなか凄い作品だ。

しかし、セールス的には芳しくなかったようで、その後OBRを離れたテイシャーンはリリースが途絶えてしまうが、93年にUK録音、ヘヴン17のマーティン・ウェア・プロデュースでカムバックを図ったのが3rdアルバムとなる本作『For The Sake Of Love』。
本作は同時期のUKソウル作品とも共通するような、生音主体の風通しの良い洗練されたサウンド。前作のストリート・ソウル路線のサウンドと比べるとやや軽い印象ではあるけれど、UKらしく丁寧に作りこまれた良質なR&B作品には違いない。テイシャーンの武骨ではあるけれどよく伸びるソウルフルなヴォーカルも健在。

アルバムは、UKらしい繊細さが生きたアップ・ナンバー「Tempted」からスタート。グルーヴィーな70年代テイストの「Been A Long Time」、瑞々しいリズムに揺れるミドル「Ecstatic」、アルバム・タイトル曲「For The Sake Of Love」は流麗なストリングスを纏ったスムーズなクワイエット・ストーム・ナンバー。

ドラマティックなスロウ「Single And Lonely」、円やかなミディアム・ソウル「Still In Love」、モホークス「The Champ」のサンプルがガイ「Groove Me」を思わせるニュージャック調「Love Is Forever」、前作の「Great Feeling」同様、マーヴィンの「Sexual Healing」を参照したようなスムーヴ・ナンバー「Romantically Inspired」、打ち込みトラックのR&Bチューン「Control Of Me」は今聴くとやや古臭さを感じるかも。

懐かしのUKソウル・シンガー、ペニー・フォードとのデュエット「Insane」、インコグニートっぽい爽快アップ「All I Ever Do」、「Love Of My Life」は濡れたムードのスロウ。ラストは、どういう縁かバーニー・ウォーレルがキーボードで参加した、テイシャーンが敬愛するマーヴィンの「I Want You」をカバー。もちろん、オリジナルとは比べられないが、ここでのテイシャーンの歌唱も十分にソウルフル。

しかし、テイシャーンはコレ以降、現在までアルバムを1枚もリリースできていないというのは本当に残念。何でもお願いしてしまって申し訳ないが、それこそクエストラヴあたりに再起のサポートをお願いしたいところだ。