love life live
Love Life Live / Isaiah Sharkey
 MTT LLC '17 

シカゴ出身、まだ20代の新進ギタリスト、アイザイア・シャーキー。
何よりも、ディアンジェロのバンド、ヴァンガードのメンバーとしてツアーや、『Black Messiah』のレコーディング参加などで多くの人に知られるようになった人。シャーキーとディアンジェロが楽器店で偶然出会い(ペットショップ・ボーイズみたいなエピソードだ)、ディアンジェロがその後この無名のギタリストをフックアップしたことで、彼のキャリアは大きく開けた。ブライアン・マックナイトやレイラ・ハサウェイの他、ジョン・メイヤーのような畑違いのアーティストにも呼ばれるようになったが、いよいよソロ・アーティストとしての活動を開始、昨年デジタルのみでリリースされていた1stアルバム『Love Life Live』が、今年になってフィジカルでもリリース。

本作はもちろんギタリストのアルバムらしく、シャーキー自身のギターをたっぷり聴くことができるが、ヴォーカル、作曲、プロデュースも自分でこなす。基本はバンドによる演奏だが、ギター以外の楽器も演奏するなど、ディアンジェロ同様に自作自演派のマルチ・アーティストとしての姿を打ち出している。
ここで聴かれるのは2000年代前半のネオ・ソウルとかオーガニック・ソウルなどと言われていたサウンドに通じるもの。残念ながらディアンジェロやヴァンガードの面々は参加していないが、豊穣な生のバンド・サウンドに現代的な感覚をちょっぴり塗した楽曲の数々は、非常に艶やかで魅力的。シャーキーのヴォーカルは、いわゆるディアンジェロ的な、抑制されたファルセット~テナーを行きつ戻りつしながらリズムとグルーヴに絶妙に絡めてくるスタイルで、これが意外と言っては失礼だが、この甘くメロウなヴォーカル・ワークはなかなか心地いい。
総じて、ディアンジェロのような才気の迸りは感じられないけれども、良い曲、良い演奏、良い歌を堪能することができるかなりの傑作と言えると思う。個人的にはカイル・ジェイソン『Generations』、サム・ボスティック『Soul Supreme』辺りに近い感触を受けるが、その2作よりも充実度で上回っている。

アルバムのオープニング・ナンバー「Pop My Toes」は、モッサリしたリズムの正調ネオ・ソウル・ナンバーで、あの時代のアノ音が好きな人にはドストライクだろう。ジェローム・ブレイリー調のドラミングがチャイルディッシュ・ガンビーノ『Awaken, My Love!』の数曲を思い出させる、スピナーズ「It's A Shame」のカバーは、グルーヴィーなジャジー・ソウルで、2000年代のネオ・フィリーの隆盛を裏方で支えたDJジャジー・ジェフのコスリをフィーチャー。
「Heaven」「Get To Your Heart」はトロけそうな極上メロウ・スロウで、スウィートなギターはデイヴィッド・T・ウォーカーを思わせたり。「In This World」はシャーキーのファルセットとギターが美しくハーモナイズする美メロ・スロウ。シャーキーによるシタール入りで、同じくシャーキーがシタールを弾いたディアンジェロ「Another Life」にも匹敵する名曲。

「Special Lady」はケニ・バーク「Risin' To The Top」風の眩惑ベース・ラインに一瞬にして掴まれるアーバン・グルーヴ。温もりのオーガニックR&B「She Knows」、ドリーミーな曲調から一転ハードなギター・ソロが嘶く「You」、「LH」はクールでジャジーなムードのネオ・ソウル・ナンバー。
「Believe」はヴォーカルもギターも同郷シカゴの偉人、カーティス・メイフィールドを彷彿とさせる、60年代のインプレッションズを再現したかのような曲。”Keep On Pushin'”と詠み込んだ歌詞も含め、カーティスへのリスペクトが溢れている。終盤はベンソン風ギターとスキャットから目まぐるしく曲調が変わるユニークな展開。
アルバム・タイトル曲の「Love-Life-Live」は、リズム隊がどっしりしたファンクなグルーヴを繰り出す。シメの「Lifetime」は柔らかなアコースティック・ソウルで温かな余韻を残す。