vibe alive
Vibe Alive! / Camelle Hinds
 Victor '00 

80年代にはブリティッシュ・ファンク・バンド、セントラル・ラインのベーシストとして活動し、バンド解散後は自身のグループ、ハインドサイトや、スタイル・カウンシルのサポートとして活動したカメール・ハインズ。
90年代も半ばになってリリースした初ソロ・アルバム『Soul Degrees』は、70年代ニュー・ソウルのムード漂う傑作だったが、本国イギリスでは結局リリースされず、発売されたのは日本のみだった。本人はさぞ失望したことだろうと思うが、UKの良心的なインディー・レーベル、エクスパンションがハインズに手を差し伸べ、99年になってようやくUKでの1stアルバム『Vibe Alive!』がリリースされる。ここには『Soul Degrees』からも3曲、「Sausalito Calling」「Heavy On Summers Vibe」「Room Full Of Strangers」が収録され、一部ではあるがようやく本国でも日の目を見るかたちとなった。
日本盤『Vibe Alive!』は、UK盤から『Soul Degrees』の3曲を外し、代わりに新曲を3曲追加、更にジャケットも洗練されたものに変更し、翌2000年にリリースとなった。

『Soul Degrees』がマーヴィン・ゲイやカーティス・メイフィールドなど、70年代のニュー・ソウル的なメロウネスを湛えたサウンドだったのに対し、本作はそれよりもAOR寄りのライト・メロウなサウンドになっていて、個人的には前作の方が好みだが、本作も良い曲が揃っているし、ハインズの若々しく瑞々しいヴォーカルはより輝きを増しているようにも思える。

個人的なアルバムのハイライトはいきなり1曲目に訪れる。リロイ・ハトソン「Closer To The Source」のカバーは、原曲の持つムードを最大限踏襲しているが、このクリスタル・メロウなサウンド、アーバンでジャジーなムード、ハインズの瑞々しいヴォーカルは、見事にこの曲の世界に溶け込んでいる。
この1曲目の印象に引っ張られている部分もあるが、アルバム全体にこの曲のムードが透徹されているため、本作は70年代後半のハトソン感の強い作品という印象も受ける。

ブラジリアン・メロウな「Carupano」、UKらしいアーバン・テイストのR&B「Time To Come Home」、ドナルド・フェイゲン「I.G.Y.」のカバーとなる「The Beauty Of You」、爽快でちょっと切ないスロウ「First Time」、レゲエっぽいリズムに狂おしいファルセットが乗る濡れたスロウ「Running Away」、夏の空気にスゥーっと溶け込むようなミディアム「I've Never Known Love Like This Before」、アルバム・タイトル曲の「Vibe Alive!」はクールなアシッド・ジャズ。「Yeah! Jam」や「Love So Good(Tribute)」といったインタールド的な小曲までメロウで心地よい。

日本盤追加曲は、ポップで心地よいグルーヴの「I Don't Wanna Be The One」、これまた爽快メロウなミディアム・ナンバー「Play That Song」、ザックリとしたアコギとワウ・ギターがファンキーな「Love Guarantee」と、いずれも上質なサマー・ソウル。