rave un2 the joy fantastic
Rave Un2 The Joy Fantastic / The Artist Formerly Known As Prince
 Arista '99 

90年代後半は、個人的には最もプリンスの音楽に疎遠だった時期。
この頃、ワーナーと泥沼の闘争の果て訣別し、自身の名を捨て、マイテと結婚したプリンスは、そんな激動の中でも変わらず溢れる創作意欲のままに大量の作品をリリース。
自分はと言えば、70年代のファンクやソウル、レア・グルーヴを夢中になって掘りまくり、リアルタイムでは台頭するヒップホップやニュー・クラシック・ソウルの作品を好んで聴いていたが、プリンスの音楽は徐々に自分の嗜好から外れていった。

『Black Album』の正規リリースは素直に嬉しかったし、 『Come』 『Exodus』もよく聴いたが、アッパーでハイテンションな『The Gold Expereince』はダメだった。ワーナーとの契約消化のために出したやっつけ作『Chaos And Disorder』はついに購入を見送った。プリンスのアルバムをリリース後すぐに買わなかったのは88年にファンになって以来初めてのことだった。続く3枚組『Emancipation』も、その物量に気圧されてスルー。4枚組『Crystal Ball』は買ったが、タイトル曲をはじめとする80年代の未発表曲ばかりを繰り返し聴いていた。
その後出たNPG名義『Newpower Soul』や未発表曲集『The Vault... Old Friends 4 Sale』も買わず、自分の中ではプリンスはすっかり過去の人になってしまっていたが、純粋な新譜としては『Emancipation』以来3年ぶりとなった本作『Rave Unto The Joy Fantastic』は、久し振りに購入した。

マイテと離婚し、心機一転、クライヴ・デイヴィスのアリスタからのリリースとなった本作。
何しろこのジャケット。目は伏し目がちだが、タイトな水色ラメラメ衣装に身を包んだプリンスの若々しい姿に萌えた。プリンスのアルバムとしては珍しく各界から招いた豪華ゲスト陣、積極的なプロモーション戦略もあり、アリスタ及びプリンスの"売る気"が漲っていた。なかでも一番のトピックが、プロデューサー名にPRINCEとクレジットされたこと。実質的(?)な"プリンス帰還"に期待はかなり高まった、が。

内容は悪くない。というか、今聴くと結構イイ。一時期の肩に力が入りすぎた厚ぼったい人力ヒップホップ・ファンク路線(これも今となっては好きなのだが)を脱し、80年代回帰的な部分も所々に覗くサウンドは、まさにプリンス唯一無二のモノ。だが、ヒットを狙ったワリには時代の音からは大きく乖離していたのかもしれない。かつてのプリンスは好き勝手やっても、時代の方から擦り寄ってくる圧倒的なパワーがあったが、この頃のプリンスには時代を引き寄せる力はなかった。

ネーム・ヴァリュー優先のゲストや、らしくないカバーも、アルバムの価値を下げたと思う。シェリル・クロウやグウェン・ステファニーなんかを聴きたいワケじゃない。また、ファンク系の楽曲が弱いのも、個人的にはマイナス・ポイント。80年代のプリンス作品もファンクは少数精鋭だったが、本作のファンク・ナンバーは精鋭とまでは言えない。一方で、メロウなスロウ/ミディアム系の楽曲が充実しているのは嬉しい。
結果的に、本作はセールス面では惨敗、おそらくファンの評価も著しく低い、殿下暗黒時代の忘れ去られた作品。自分も当時は2~3度聴いてダメだと諦め、以来一度も聴き返すことなく封印していたが、プリンスの死後に本作を聴き直し、彼の遺した音楽はどんな作品でもすべて聴く価値があるということを認識させてくれた。

アルバム冒頭のタイトル曲「Rave Un2 The Joy Fantastic」は隙間の多いスカスカのトラックに、ハードなギターが鳴り響く中、プリンスがファルセットで声を潰すようにガナる。「Undisputed」も音数少なくリズムを強調したトラック。チャックDのラップも入り、ここでは初期NPGのようなヒップホップ・ファンクを展開。
シングル曲「The Greatest Romance Ever Sold」はシンプルなバラードで、随分とあっさりし過ぎててやや物足りないが、途中のアラビックな展開は美しい。当時人気のあったラフ・ライダーズの女性ラッパー、イヴをフィーチャーした「Hot Wit U」は80年代のムード漂うファンク。

「Tangerine」は「Starfish & Coffe」系のキュートでポップなナンバー。良い曲だが短か過ぎるのが惜しい。「So Far, So Pleased」はノー・ダウト(知りません)のグウェン・ステファニー参加のポップ・ロック曲。
「The Sun, The Moon And Stars」は夢見心地な浮遊感に満たされたナイスなミディアム。プリンスのふわふわしたファルセットが気持ちイイ。「Everyday Is A Winding Road」はシェリル・クロウのカバーとのことで、原曲は聴いたことがないが、4つ打ちのハウスっっぽい入りから、一気にバンド・サウンドが流れ込むアップ・ナンバー。

「Man ’O’ War」はファルセットがネットリと絡むスロウ。「Baby Knows」はシェリル・クロウ参加のポップなロックンロール。アニ・デフランコ参加のピアノ・バラード「I Love U, But I Don't Trust U Anymore」は離婚したマイテのことを歌ったものか。
「Silly Game」もファルセットが気持ちよく漂うミディアム。「Strange But True」はテクノ/ハウス的なクラブ・サウンドで、これも初期NPGの、シングルのリミックス・ヴァージョンなんかでよく聴かれた試みを彷彿とさせる。「Wherever U Go, Whatever U Do」は柔らかムードのミディアム。
最後に収録されたシークレット・トラック「Prettyman」はジャジーなパーティー・ファンクで、後の「Musicology」あたりへと通じる曲。