j beez wit the remedy
J. Beez Wit The Remedy / Jungle Brothers
 Warner Bros. '93

1st『Straight Out The Jungle』、2nd『Done By The Forces Of Nature』と、エポック・メイキングな重要作をリリースしてきたジャングル・ブラザーズ。
同様に最初の2作が高く評価されたネイティヴ・タンの同門、ア・トライブ・コールド・クエストとともに、次のアルバムにはこれまで以上に大きな期待がかけられることとなったが、ともに1993年にリリースされた両グループの3rdアルバムは明暗が分かれることに。ヒップホップをアートの域にまで高めたと大絶賛を浴びたATCQの『Midnight Marauders』に対し、ジャングル・ブラザーズ『J. Beez Wit The Remedy』の、当時の評価は散々なものだったように記憶している。

日本盤ライナーによると、本作では多くの曲でメンバーが楽器を演奏したものをサンプリングする手法を取り入れているようだが、ファンキーなトラックとラップのカッコよさは相変わらず。個人的には当時も気に入って聴いていたし、今聴いても十分にカッコいい。
当時酷評された大きな理由のひとつは、おそらくアルバム終盤の、重層的なサンプリングによるコラージュ風の楽曲群だろう。彼ららしい旺盛な実験精神が表れていると思うが、ヒップホップのリスナーからは敬遠されたのも理解できるし、やや肩に力が入り過ぎた印象で、それらは楽曲としての魅力もちょっと薄いように感じる。また、ここでの試みは、アルバムの他の楽曲でもそれほど鼻に付かない程度に取り入れられているように思える。

初っ端の「40 Below Trooper」から、このグループらしいモッサリしたノリのァンキーなナンバー。「Book Of Rhyme Pages」はアル・グリーン「I'm Glad You're Mine」の定番ビートをアフロ・トライバルに響かせるファンク・トラック。パブリック・エネミー「Miuzi Weighs A Ton」へのオマージュのような「My Jimmy Weighs A Ton」もドファンキー。
荒っぽいビートの「Good Ole Hype Shit」、ラグドに砕けたビート・ループが実験的な「Blahbludify」、ダルなベースと乾いたパーカッション音がファンキーな「Spark A New Flame」、パーラメント「Come In Out Of The Rain」のドラムをサンプリングした「I'm In Love With Indica」、「Simple As That」はスライ「Sing A Simple Song」、ミーターズ「9 Til 5」をサンプリング。
トム・スコット「Sneakin' In The Back」のドラムがマッシヴ・アタック「Blue Lines」を思い出さずにいられない激クールなミッド・ファンキー・チューン「All I Think About Is You」、ワッツ103rdストリート・リズム・バンド「A Dance, A Kiss And A Song」使いの「Good Lookin Out」と、ここまでは文句なし。

2ndアルバム収録曲とは綴り違いの「JB's Comin Through」以降の4曲はハードなサウンド・コラージュの奔流。本作擁護派の自分も、このあたりの曲は正直そんなに好きじゃない。