owed to myself
Owed To Myself / Charles Hilton Brown
 Ampex '74 

おそらくイタリアを拠点に活動していたと思われる黒人シンガー、チャールズ・ヒルトン・ブラウンの、多分唯一のアルバム『Owed To Myself』。
本作でバック・バンドを務めるのは、在英アフロ・ロック・バンド、アサガイのメンバーだが、録音はイタリア。そう言えば、フェラ・クティのバンド出身のナイジェリアン2人組、イージー&アイザックのアルバム『Soul Rock』もイタリア録音だったが、意外や70年代のイタリアはアフロ・ファンクが盛んだったりしたのだろうか?

一般的にはアフロ・ファンクにカテゴライズされるだろう本作だが、実際にはそれほどアフロな臭いは強くない。フランスのラファイエット・アフロ・ロック・バンドなんかにも共通するが、ヨーロッパの黒人ミュージシャンによるアフロ解釈といった感じで、ベースにあるのは彼らの憧憬の対象であろうUS産ファンク/ソウル・ミュージックだ。それは本作で取り上げられたUSヒット曲のカバーからも見て取れる。

アルバムのオープニングは、オーティス・レディングの名バラード「Try A Little Tenderness」のカバー。グルーヴィーなファンク・トラックの「I'm Comin' Home」、メロウなバラードの「Tell Me Once Again」、「Maddox」はパーカッシヴに疾走するアフロ・グルーヴ。
オージェイズの大ヒット曲「Love Train」のカバーは、フィリー・サウンドの華麗さは皆無の熱血ソウル。「G.R.F.」は土着的な鳴りモノと大陸的なホーンが煽るアフロ・ファンク。ビル・ウィザーズのグラミー受賞曲「Ain't No Sunshine」のカバーは熱くソウルフルに歌い上げる。ラストの「Argument's」も強力なグルーヴがウネるファンク・チューン。