changes
Changes / T-Boy Ross
 Motown '79 

ダイアナ・ロスの弟で、モータウンでライターとして活動したアーサー "Tボーイ" ロス。
彼の名がソウル史に刻まれている理由は、大スターの実弟だからということではなく、マーヴィン・ゲイ「I Want You」の作曲者のひとりだから。アルバム『I Want You』収録曲のうち、タイトル曲と「All The Way Around」「Soon I'll Be Loving You Again」がレオン・ウェアとTボーイの共作(「Soon~」はマーヴィン含む3人の共作)。また、『I Want You』には短いカバーが収録されたマイケル・ジャクソン「I Wanna Be Where You Are」もレオンとTボーイのコンビによる作品だし、レオンのソロ・アルバムにも2人の共作が数曲入っている。
まずは作曲家として名を売ったTボーイだが、やはり本人はアーティスト志向が強かったのか、79年になって自身の1stアルバムとなる本作『Changes』をリリースする。

「I Want You」のセルフ・カバーも含む本作だが、レオンの作曲クレジットがあるのは2曲のみで、他はジョー・サンプルやロバート・ウィンタースらとの共作。ジェイムス・ギャドソン、ワーワー・ワトソンといった『I Want You』でもプレイしていたミュージシャンも録音に参加している。
アルバム全体としては、ややAOR/ポップ寄りの印象を受けるが、曲自体はそれなりに揃っている。しかし本作の最大の問題点はTボーイの歌唱だ。なかなかクセの強いヴォーカルで、お世辞にも上手い歌とは言えない。残念ながら、彼からソウル・シンガーとしての魅力を感じ取るのは難しいだろう。作曲家として成功してからソロ・アルバムのリリースまで時間がかかったのも、結果的にアルバムがコレ1枚で終わってしまったのも、歌い手としての技量を考えれば無理からぬところか。

収録曲の中では、やはり「I Want You」が飛び抜けてイイ。ここではモダンで都会的な雰囲気に仕立てられており、マーヴィンのオリジナルには遥かに及ばないことは言うまでもないが、歌の弱さを補って余りある魅力がある。
もう1曲のレオンとの共作曲の、メロウなミディアム・スロウ「To The Baby」も好曲。マーヴィンかレオンが歌っていれば、と思わせてしまうところが悲しいが。
その他の曲では、仄かにトロピカル・ムード漂う「I'm In Between Changes」や、メロウなミディアムの「She's My Lover」、温もりのあるポップな「Smile And Be Beautiful」なんかは悪くないと思うし、Tボーイのヴォーカルを気にしなければ楽しめる。