vanity 6

Vanity 6
 Warner Bros. '82 

『Dirty Mind』『Controversy』『1999』と大股でステップアップしていったプリンスは、そのあり余る創作力を年1枚のアルバムだけでは発散できなくなり、アウトプットの場としていくつものサイド・プロジェクトを運用するようになる。81年にはまず手始めにザ・タイムの1stアルバムをリリース。翌82年には、早くもタイムの2ndアルバム『What Time Is It?』と、ヴァニティー6の本作、邦題『セクシー・ハリケーン』をリリースした。

当時のプリンスの恋人だったヴァニティーことデニース・カトリーナ・マシューズを中心に、ブレンダ・ベネットとスーザン・ムーニーズの3人からなり、ランジェリー姿で卑猥な歌詞の曲を歌い踊るこのグループ、もちろんプリンスがほとんどの作曲・演奏・プロデュース。ここでヴァニティーらの歌手としての実力を問うのは野暮というもので、キャリア初期のプリンスのプロダクションを楽しむべき作品なのだが、コレがプリンス・ファンの贔屓目から見てもお世辞にも面白い作品とは言えない。

タイムの作品が、比較的オーセンティックなブラック・ミュージック/ファンクの捌け口として機能していたのに対し、ヴァニティー6は遊びや悪ふざけ、或いは実験の場だったのか。アースがエモーションズを手がけ、Pファンクにパーレットやブライズがあったように、プリンスもガールズ・グループを送り出してみたかっただけなのか。
しかし、『Purple Rain』大ヒット中にリリースされたアポロニア6のアルバムが、プリンスもそれなりに気合いを入れて制作したと思われ、意外にも好内容だったのを思うと、何だかヴァニティーが不憫にも思えてくる。

アルバムの冒頭、グループの代表曲となる「Nasty Girl」はエレクトロ・ポップなダンス・ナンバーで、アルバムは全体的に基本この曲を踏襲したような内容。「Wet Dream」もポップで正直特に何も言うこともないような曲。「Drive Me Crazy」は異様なピコピコ音が猛烈に80年代的。唯一プリンス作ではない、デス・ディッカーソンのペンによる「He's So Dull」はポップに振り切れたガールズ・グループらしい曲で、本作中最もマトモな曲。

「If A Girl Answers(Don't Hang Up)」はベースがカッコいいファンク・ナンバーで本作のベスト・トラック。「Something In The Water」みたいなドラム・マシンのニューウェーヴ・ファンク「Make-Up」、「Bite The Beat」もポップな曲。ラストの「3×2=6」はちょっと退屈なバラード。