sings for someone you love
Sings For Someone You Love / Barry White
 20th Century '77 

正直なところ、バリー・ホワイトはどうも苦手だ。優雅で豊穣なストリングスをたっぷり設えたシンフォニック・ソウルを奏で、70年代に数多くのヒット曲を放ちマエストロの称号をほしいままにした才人だが、あの太く厚ぼったい超低音ヴォイスで愛を語る長尺バラードには、個人的にあまり魅力を感じられない。「I'm Gonna Love You Just A Little More Baby」や「Never, Never Gonna Give You Up」といったヒット・ナンバーに代表される、ファンクネスを滲ませたグルーヴィーな曲は大好物なのだけれど、アルバムの大半を占めるムーディーなバラード曲はちょっと退屈だったりする(これはアイザック・ヘイズも同様)。
むしろ、トム・ブロックやウェスト・ウィングといった、ホワイトがプロデュースした他者の作品の方が、あの声による歌と語りが邪魔しないため、ホワイトが本来持つ洗練されたソウル・マナーが発揮されているようで聴き応えがある。

そんなホワイトのソロ・アルバムの中では、1番好きなのが本作『Sings For Someone You Love』。
本作を気に入っている理由は、やはりアルバム冒頭の2曲の存在だ。オープニングの「Playing Your Game, Baby」は、ループ感のあるリズム・トラックがクールにグルーヴするミドル。
「It's Ecstasy When You Lay Down Next To Me」はグルーヴィーなドラムと旋回するストリングスがジワジワと高揚させる。どちらの曲も「I'm Gonna Love You Just A Little More Baby」の延長線上にあるような、ファンクネスを湛えたメロウ・グルーヴの逸品。

アルバムのその他の曲は数段落ちるが、冒頭2曲の余韻で聴きとおすことができる。ラテン・テイストをほど良く取り入れた「You're So Good, You're Bad」、メロディアスで洗練されたミディアム「I Never Thought I'd Fall In Love With You」、ムーディーなスロウの「You Turned My Whole World Around」、華やかなシャッフル調の「Oh What A Night For Dancing」、豪奢な弦アレンジの「Of All The Guys In The World」と、バラード曲も冗長にならない程度に収めている。