superfly tnt
Superfly T.N.T. / Osibisa
 Buddah '73 

70年代前半に数多く制作されたブラックスプロイテーション・ムービー。その中でも、映画本編の内容、及びそのサウンドトラック盤ともに最高峰とされる1972年公開の『Superfly』。とは言っても、この手の映画で自分が見たことがあるのはその『Superfly』のみなので、これが果たして優れた作品なのか他と比較できないので分からないが、少なくともカーティス・メイフィールドのサントラ盤『Superfly』は紛れもなくブッチぎりの金字塔であることは断言できる。

映画が大ヒットを記録したことで、気を良くした主演のロン・オニールが今度は自らメガホンを取り、早くも翌73年に封切られたのが続編となる『Superfly T.N.T.』。
コカインの売人稼業から足を洗うことを決意した主人公プリーストが、大金を手にし追っ手から逃げ延びたところで前作は終わっていたが、この続編では高飛び先のローマで放蕩していたプリーストが、フランスから搾取されるアフリカ植民地の解放運動に加担する、というストーリー、らしい。
70年代ブラックスプロイテーションを網羅したムック『ソウル・オブ・ブラック・ムービー』によると、この映画は「トンでもない駄作」なんだそうで、おそらく興行成績も振るわなかったと思われ、更なる続編が制作されることもなかった。

一方で、ブラックスプロイ映画にとって映像と同じぐらい重要な要素である音楽は、本作でも冴えている。映画の舞台がアフリカということで、白羽の矢が立ったのが在英ガーナ人を中心に結成されたアフロ・ファンク・バンド、オシビサ。
サントラらしいスリリングなジャズ・ファンクに、土臭いパーカッションがアフロセントリックなムードを放つサウンドは、なかなか聴き応えがある。稀代の名盤であるカーティスの『Superfly』と比べては分が悪いが、本作も十分に黒くヒリヒリしたファンキーなサウンドを楽しめる。

アルバムは、パーカッションが乱舞しグルーヴィーに疾走するアフロ・ジャズ・ファンク「T.N.T.」からスタート。ポップな曲調のアフリカン・グルーヴ「Superfly Man」、抑制を効かせつつもダークでスリリングに展開するジャズ・ファンク「Prophets」、ブラックスプロイ臭漂うジャズ・ファンクの「The Vicarage」、「Oye Mama」はファンキーに掻き毟るワウ・ギターと分厚いホーン・セクション、土着的なパーカションにアフリカン・コーラスも乗るアフロ・ファンク・チューン。

「Brotherhood」はトライバルなビートで突き進むアフロ・ファンク。陽気なアフロ/カリビアン・グルーヴの「Come Closer(If You're A Man)」、アフロ・パーカッションで埋め尽くされる「Kelele」、ラストの「La Ila I La La」はクールなフルートとパーカッションが呪術的なムードを醸す。