some of my best jokes are friends
Some Of My Best Jokes Are Friends / George Clinton
 Capitol '85 

「Atomic Dog」の特大ヒットはあったものの、80年代にクリントンがキャピトルからリリースした4枚のソロ・アルバムは、大したことはないと思ってしっかり聴きこんでいなかった。
キャピトルの3枚目となるこの『Some Of My Best Jokes Are Friends』も、2~3度聴いてダメだと思いCDを棚の奥にしまいっぱなしだったのだが、久々に引っ張り出して聴いてみたところ、いやいやコレも決して侮れない作品だということにようやく気付いた次第。

70年代に栄華を誇ったPファンク帝国も、この頃には既に瓦解。バーニーは去り、ブーツィーやジュニーはクレジットに名はあるものの、関与は極めて限定的。古参メンバーで目立つのはゲイリー・シャイダーぐらいで、他はブラックバード・マックナイト、デイヴィッド・スプラドリー、デニス・チェンバース、アンドレ・フォックス、クリントンの息子のトレイシー・ルイスら、70年代末以降にPファンクに合流してきた連中が中心となっている。

新顔ではトーマス・ドルビーやダグ・ウィンブッシュといったところもイイ仕事をしているが、80年代後半のPファンクの展開を考える上で重要なのが元スレイヴのスティーヴ・ワシントン。80年の『Stone Jam』を最後にスレイヴを脱退したスティーヴは、オーラやシヴィル・アタックのプロデュースを手がけていたが、80年代半ばになるとクリントンと邂逅(プライヴェートでは元ブライズのシーラ・ホーンと結婚)。
おそらくかつてのブーツィーやジュニーのような役割をクリントンから期待されていただろうスティーヴは、本作ではプロデュースは1曲のみだが、以降クリントンの片腕として、ジミーG&ザ・タックヘッズ『The Federation Of Tackheads』、クリントンのキャピトル4作目『R&B Skeltons In The Closet』と、暗黒時代のPファンクにおいて存在感を増していくことになる。

アルバム1曲目の「Double Oh-Oh」は、ゲートエコーが効きまくったドラム・ビートで通貫するエネルギッシュなファンク・チューン。続く「Bullet Proof」も同系統のソリッドな縦割りビートのファンクでコレもイイ。この2曲はクリントンとゲイリー・シャイダーのプロデュース。
「Pleasures Of Exhaustion(Do It Till Drop)」はクリントンとスティーヴの共同プロデュース。ここで聴けるのはスレイヴやオーラとはかなり異なるサウンドで、スティーヴがPファンクの毒に染まった印象。フルートや逆再生音、パーカッシヴなリズムが何やらトライバルなムードも醸す、インパクト大なファンク・ナンバー。

クリントンとブーツィーのプロデュースによる「Bodyguard」は、作曲クレジットにはその2人に加えジュニーの名も。ほぼ通して歌うクリントンのヴォーカルにも気合いが漲っている。
「Bangladesh」はトレイシーとの親子共同プロデュースで、ヴォーカルも全編トレイシー。ここでは、まだ後のトレイ・リュード『Drop The Line』ほどのヒネクレっぷりはなく、ジュニーをアク抜きしたようなナヨ声ファルセットだが、哀愁溢れるスロウで持ち味を発揮している。

「Thrashin'」はクリントンと共にトーマス・ドルビーがプロデューサーに名を連ねる。非常にタイトなバンドの演奏が強靭なグルーヴを繰り出す、なかなかカッコいいファンク・チューンで、ホーン・アレンジも気が利いている。
ラストのアルバム・タイトル曲「Some Of My Best Jokes Are Friends」も、トーマス・ドルビーに加えダグ・ウィンブッシュとの共同プロデュース。デジタルな感触のリズムがクールなミッド・ファンクだ。