if it aint broke dont funk wid it
If It Ain't Broke, Don't Funk Wid It! / Slapbak
 Semaphore '96 

ジャラ・ハリス率いるカリフォルニアのファンク・バンド、スラップバック。
リプリーズから出たデビュー作『Fast Food Fankateers』は92年のリリースということで、ファンク・バンドとしてはかなりの後発組。かつて70年代~80年代前半にファンクが果たした役割が、ほぼヒップホップに取って代わられた90年代に、このような新人ファンク・バンドがメジャー・デビューを飾ったことに、当時は少なからず驚きを憶えた。
その1stアルバムは、ジョージ・クリントン、ブーツィー・コリンズ、ラリー・ブラックモンといったファンク・レジェンドがプロデューサーとして参加するなど、かなりの期待を受けての船出だったことが窺える。日本盤もリリースされ、日本でも一部の好事家の間では話題を呼んだように記憶している。
しかし、やはりセールス的には苦戦したようで、リプリーズからのリリースは結局1枚のみ。以降、地元西海岸では地道にライヴ活動を続け、マイナー・レーベルからアルバムを数枚出し、おそらくバンドは現在も活動中。

本作『If It Ain't Broke, Don't Funk Wid It!』は96年リリース、デビュー作から4年ぶりとなる2ndアルバム。
この時点でバンドは9人編成で、うち4人がハリス姓。リーダーのジャラ・ハリスは全曲の作曲・プリデュース、多くの楽器演奏もこなすマルチ・プレイヤーなので、実際のところスラップバックはジャラ・ハリスのソロ・プロジェクトといった性格が強いのかもしれない(ライヴではバンドとして他のメンバーも一緒に演奏するのだろうが)。
本作では1stのようなゲストもいないため、よりジャラ・ハリスのワンマン・レコーディングの傾向を強めているように思う。音楽的には70年代~80年代のファンク・バンドからの影響、とりわけPファンク的な色合いが濃いと感じるが、それと同じぐらいにヒップホップからも影響を受けているあたりは、やはり90年代を生きるファンカティアといったところ。

アルバム冒頭の「Pure Funk」から、Pファンク・マナー横溢のファンク・チューンが炸裂。スムーズなグルーヴのファンク・ナンバー「Sway」、ジャラ・ハリス単独録音となる西海岸マナーのクルージング・チューン「Funky Situation」、フィンガズのトーク・ボックス入りのブギー・ファンク「We Come To Jam」、ダルなムードのスロー・グルーヴ「Lover Of The Year」、Gファンク調のシンセ音が響く「Call Me What You Like」、「Nothing Lasts Forever」もバウンスするビートがGなファンク・チューン。

スライ「Remember Who You Are」を思わせるような曲調の「Cry」は、捻じれたグルーヴとヴォーカルもどこかスライっぽい。ファンキーなワウ・ギターがグルーヴに絡む「Love To Love You」、DJクイックみたいなGファンク・スムーヴが気持ちイイ「Can I Flow」、グルーヴィーなミッド・ファンク・トラックの「Trick」、浮遊感のあるミディアム・スロー「Take My Time」、これもジャラ・ハリスの単独録音となる「Wake Up」は、どこかプリンスっぽい雰囲気も。ラストの2曲「Sharpened Knife」「Everybody Down」はギターが唸るファンク・ロック・チューン。