funk 45s

これまた随分とマニアックなディスク・ガイド。
60年代後半から70年代前半のファンクの7インチ・シングル盤、ファンク45'sのみを集めたガイド本。2004年の刊行で、出てすぐに買って読んだ。
個人的には、その頃はまだレコードを集めていたものの、7インチはほとんど持っていなかったし、1年ちょっと前からまたイチからレコードを買い集めているが、今も7インチにまで手を出す気にはなれない。基本買うのは3000円までのLPで(昔はもう少し値が張るものも買っていたけど)、よっぽど好きなアルバムでなければCDで十分、と思っている自分としては、ドス黒く深いファンク45'sの底無し沼に足を踏み入れる勇気はない(一歩踏み込んだらもう引き返せなくなりそうで恐い)。

なので、この本も巻末で特集しているディープ・ファンクのコンピ盤ガイドが目当てで買ったのだと思う。コレは大いに参考になって、馬鹿みたいにコンピCDを買い込んだ。
もちろん、本書のメインはドス黒く奥深い7インチ盤のレヴュー。ルイジアナ/ニューオリンズから始まり、テキサス、フロリダ/マイアミ、キャロライナ、ヴァージニア、ジョージア/アトランタ...と全米各地のローカル・ファンク・シングルを地域別に掲載。

問題はアルファベット順の索引が付いていないこと。各地域ごとにはアルファベット順に掲載されているが、例えばショウメン・インク「The Tramp」がどこに載っているか探そうにも、カリフォルニア出身のバンドだと知っていないと探せない。7インチのレーベル面の写真がズラリと並んだ様はある意味壮観ではあるが、普通のディスク・ガイドのようにジャケットで探したりすることも不可能。

およそ初心者向けとはとても言えないが、ハナからそういうライト層は相手にしていないのだろう。そのスジのディープな人たちにとっては堪らない本なのだろうな、という想像はつく。自分のようなライト・リスナーにとっては手引書としては使えないが、解説文の端々から黒々と脂ぎった噎せ返るようなファンクネスが充満していて、読み物としては十分楽しめる。コレを読んだら泥臭く汚れたレア・ファンクを無性に聴きたくなってくる。
また、DJシャドウやケヴ・ダージ、ムロさんに鈴木啓志先生のインタヴュー記事も面白い。シャドウが本書で言っているように、ヒップホップはファンクの進化した形、ファンクはヒップホップの原点ということが、本書全体を読んでいても感じられる。

本書の刊行から15年近く経っているが、この分野はこの間にもニュー・ディスカバリーがいろいろとあったと思うので、その辺りも大幅に追加収録した増補版もいずれ期待したいところ。もちろん、その際には索引もちゃんと付けてもらえるとありがたい。