roy hargrove

ジャズ・トランペッターとしてのロイ・ハーグローヴの作品を聴いていない自分は、彼の才能のほんの一面にしか触れていないのだけれど、越境するミュージシャンとしてのハーグローヴの姿を映した、2000年のいわゆるソウルクエリアンズ3部作、ディアンジェロ『Voodoo』、コモン『Like Water For Chocolate』、エリカ・バドゥ『Mama's Gun』の3枚は、自分にとってはとても重要な作品。

soulquarian

この3作に通底する独特のムードは、クエストラヴやJディラ、ジェイムス・ポイザーらの演奏とともに、ハーグローヴの奏でる音から醸し出されていた部分も大きかったように思う。
「Playa Playa」での煙たく燻されたホーンの音色や、「Send It On」でのクール&ザ・ギャング「Sea Of Tranquility」のホーン・サンプルと柔らかくレイヤーされた甘美なフリューゲルホルン、「Time Travelin'」の時間と空間の狭間で揺らめくようなミュート、「Cold Blooded」ではファンクに拉げたグルーヴをトランペットが巧みに乗りこなした。
またフェラ・クティのトリビュート盤『Red Hot + Riot』収録の、ディアンジェロとそのバンド、ソウルトロニクスによる「Water No Get Enemy」のカバーでも、フェミ・クティのサックスとともにスモーキーでアフロなムードをハーグローヴのトランペットが醸成していた。
voodoo

『Voodoo』を引っ提げてのディアンジェロのワールド・ツアーにもソウルトロニクスの一員としてハーグローヴは帯同。数多くのブート音源や『Live In Oslo』 (実際はストックホルムでの公演)で、この時の模様を聴くことができるが、"史上最高のファンク・バンド"とも称されたこのツアーでも、ハーグローヴは多大な貢献を果たした。

クエリアンズ3部作の後に、その音を自分なりに咀嚼し、ヒップなジャズ・ファンク/ヒップホップ/R&Bと融合してみせたのが、自身のリーダー・プロジェクトであるRHファクター。なかでも、2003年の『Hard Groove』と2004年の『Strength EP』はよく聴いた。2006年の『Distructions』も力作。
『Head Hunters』をはじめとする70年代のハービー・ハンコックのファンク路線然り、先進的で優れたジャズ・ミュージシャンは狭義のジャズに囚われず貪欲に自己の表現を拡げていくのだという姿勢を、この頃のハーグローヴにも感じたし、それは近年のロバート・グラスパーらの活動にも通じていくものだ。
hard groove

作品の上での主だったクロスオーバー路線はここで終わってしまったが、その後もディアンジェロ『Black Messiah』の録音にも参加していたし、昨年にはRHファクターとしての来日公演も行った。もちろん本流のジャズ・ミュージシャンとしての活動もあり、病を押して最後まで精力的に活動していたのだろう。
あまりにも若過ぎて無念だが、彼の遺してくれた音楽をこれからも大事に聴き続けていきたい。