body heat
Body Heat / Quincy Jones
 A&M '74 

アメリカ・ポピュラー・ミュージック界の重鎮、クインシー・ジョーンズ。
クインシーと言えば、まずマイケル・ジャクソンの一連の作品ということになるだろうが、実は個人的にマイケルにあまり思い入れもなく、また「愛のコリーダ」のようなディスコ・ヒットの印象が強いこともあって、クインシーのリーダー作はほとんど聴いていないのだが、数枚聴いたなかで1番出来が良いと感じるのが本作『Body Heat』。
クインシーの長いキャリアにおいて、ジャズからブラック・ポップ・フィールドへと活動の場を拡げていくターニング・ポイントのひとつとなったのが本作と言えるのだろうか。

本作でまず特筆すべきは、ヴォーカルとして起用され、さらに3曲を作曲したレオン・ウェアの存在。
60年代から作曲家として活動し、72年にはユナイティッド・アーティスツから地味渋なソロ1stアルバムをリリースしてはいたものの、おそらく一般的にはまだ無名のシンガー/ソングライターだったレオンを抜擢したクインシーの眼力は流石と言うべきか。
その他にも、バーナード・イグナーやミニー・リパートンといった、当時の新進気鋭の若手アーティストをヴォーカルに起用。一方で、演奏陣はビッグネームが顔を揃える。デイヴ・グルーシン、ハービー・ハンコック、リチャード・ティー、ボブ・ジェイムス、ビリー・プレストン、デニス・コフィー、アーサー・アダムス、フィル・アップチャーチ、エリック・ゲイル、ワーワー・ワトソン、デイヴィッド・T・ウォーカー、ジェイムス・ギャドソン、ポール・ハンフリー、バーナード・パーディー、グラディー・テイト、チャック・レイニー、メルヴィン・ダンラップ、ロバート・マーゴレフ、マルコム・セシルなどなど、名前を羅列するだけでも目眩がするような豪華さ。音楽業界におけるクインシーの政治力の絶大さを物語るアルバムとも言えそう。

アルバムのオープニング・ナンバーとなるタイトル曲「Body Heat」から、早速レオンが作曲とヴォーカルで存在感を示す。76年のソロ2nd『Musical Massage』でもセルフ・リメイクされた曲だが、ファンキーでユルく粘っこい官能グルーヴのリメイク版に対し、こちらのオリジナル版はダークで静寂なムードが漂う。レオンとともにブルース・フィッシャーなるシンガーがリード・ヴォーカルに起用されている。
「Soul Saga(Song Of The Buffalo Soldier)」はファンキーなグルーヴが渦巻くニュー・ソウル・テイストのナンバーで、この曲はレオンとジム・ギルストラップがヴォーカルを取る。

静謐なジャジー・バラードの「Everything Must Change」はバーナード・イグナーの作/ヴォーカル。バーナードと言えば、マリーナ・ショウ『Who Is This Bitch, Anyway?』で「Loving  You Was Like A Party」「You Been Away Too Long」などを提供したことで知られるが、「Davy」あたりと近いムードを持つこの曲も実にバーナードらしい曲。

「Boogie Joe, The Grinder」はグリグリとグラインドするよなグルーヴがカッコいいファンク・チューン。レオン作の「One Track Mind」も彼らしい淫靡な雰囲気のファンキーなナンバー。「Just A Man」はクインシー自らヴォーカルを取るが、下手過ぎて話にならない。「Along Came Betty」は軽やかなフュージョン調。
ラストは「I Want You」と並ぶレオンの代名詞的な曲「If I Ever Lose This Heaven」。ミニー・リパートンとレオン、アル・ジャロウのヴォーカルが交差する、抑制されたムードと対比するかのようなサビの高揚感にグッとくる名曲。数多のカバーを生んだ曲だが、個人的にはアヴェレージ・ホワイト・バンドのヴァージョンが気に入っている。