get into something
Get Into Something / The Isley Brothers
 T-Neck '70 

3兄弟によるヴォーカル・グループとして50年代から活動し、「Shout」や「Twist & Shout」などのヒット曲も生むなど活躍したアイズレー・ブラザーズ。その長いキャリアにおいて何度かの大きな転換点があったが、最初のターニング・ポイントは1969年だったと言っていいのだろう。
この年、一時的に在籍したモータウンを離れたアイズレー兄弟は自主レーベル、Tネックを設立し、そこから早速放ったヒット・シングル「It's Your Thing」こそが分水嶺となった。ちょうどJBやスライ、ミーターズがファンク革命を起こし、表現を飛躍的に進歩させた頃、機を見るに敏なアイズレーもこの動きに素早く反応。粘っこく激しく弾むリズムの「It's Your Thing」は、アイズレーのファンク路線の幕開けを飾る記念碑的な1曲であり、以降数多くのファンク・バンドにカバーされ引用され続けたファンク・クラシックだ。
69年には「It's Your Thing」をフィーチャーしたアルバム『It's Our Thing』、「It's Your Thing」のヴァリエーションと言える「I Turned On You」を含む『The Brothers : Isley』の2枚のスタジオ録音作をリリース。後者での怪しげなジャケットも含め、既にアイズレーはヴォーカル・グループとしての枠を大きく逸脱していた。

続く本作『Get Into Something』は、いよいよ到来したファンク・ディケイドの船出を飾る、70年代最初のアイズレーの作品。魔法の絨毯らしき敷物に3兄弟を乗せて飛び立とうとしているのか、ロナルドが両腕を水平に広げたジャケットは意味不明かつ滑稽だが、内容としては前2作の路線をさらに大胆に推し進めたファンク・アルバムとなっている。
ファンク路線に舵を切ったアイズレーにとって、インストゥルメンタル・パートの強化は最重要事項であり、末弟2人、アーニーとマーヴィンは既に60年代末からバックアップを務めていたが、本作ではアイズレー黄金期のラスト・ピースとなるクリス・ジャスパーも合流。更に、ジョージ・モーランドやトゥルーマン・トーマスといった馴染みの面子も加わり(一部楽曲ではバーナード・パーディーも参加)、いよいよ体制が整ってきた。

アルバムのオープナーの、7分半に及ぶ長尺のファンク・ナンバーであるタイトル曲「Get Into Something」は、インスト・パートが強化されたアイズレーを象徴するような1曲。ドラムとギターがグルーヴを主導し、リズミカルなピアノがスパイスを振りかけ、ホーンも分厚く肉付けする強力なファンク・チューンで、荒々しくゴツいドラム・ブレイクも搭載。続く「Freedom」はシャッフル調のリズムでグルーヴするファンクで、この頭2曲はアーニーとパーディーの2人がドラムを担当しファットなビートを叩き出しいる。
「Take Inventory」はクールなコーラスがロナルドのヴォーカルを盛り立てるミッド・ファンクで、コレもイイ。

「Keep On Doin'」は聴いてビックリ、コレはJB'sのスーパー・ヘヴィー・ファンク・クラシック「The Grunt」ではないか。「Keep On Doin'」の録音が69年の夏、アルバムに先駆けてシングル・リリースされたのが70年3月、「The Grunt」のレコーディングが70年5月なので、JBがアイズレーを聴いてパクったことになる。JBはこれ以前にも、「It's Your Thing」を下敷きにしてマーヴァ・ホイットニー「It's My Thing」を録音したり、後にもっと露骨な例としてオハイオ・プレイヤーズ「Skin Tight」のあの黄金ベースラインをそのまま流用したJB's「Makin' Love」があったりと、実はパクリ癖があるのは承知していたのだが、この「Keep On Doin'」を初めて聴いた時はさすがに腰を抜かした。ブーツィーの頑強なベースがグルーヴを支配する「The Grunt」には正直敵わないが、アイズレーの「Keep On Doin'」も十分に傑作ファンクだ。

ロナルドの歌い回しがユニークなミディアム・ナンバー「Girls Will Be Girls」、ピアノとストリングス・アレンジがエレガントなスロウ「I Need You So」、アーニーのファズ・ギターが終始ウネりまくるファンク・ロック「If He Can You Can」、ストリングスが優雅なバラードの「I Got To Find Me One」、ファルセットを交え歌われるスロウの「Beautiful」、ラストの「Bless Your Heart」は十八番の「It's Your Thing」タイプの粘っこくバウンスするファンク・チューン。