star kittys revenge
Star Kitty's Revenge / Joi
 Universal '02 

ダラス・オースティンのプロデュースで1994年に『The Pendulum Vibe』でデビューしたアトランタの女性シンガー、ジョイ。
96年にはフィッシュボーンを起用して2ndアルバム『Amoeba Cleansing Syndrome』を制作するもお蔵入りの憂き目に。未聴だが、当時のR&Bのメイン・ストリームから大きく逸脱した内容だったのだろう。
以降のソロ活動は停滞を余儀なくされ、アトランタのプロデューサー集団、オーガナイズド・ノイズ周辺のダンジョン・ファミリー作品に顔を出しつつ機を待っていたジョイだが、2002年にドーン・ロビンソンが脱けたルーシー・パールに加入(するも結局この体制でのリリースは無し)。それと前後してリリースされた実質的な3rdアルバムが本作『Star Kitty's Revenge』。

本作で主にプロデュースを担うのは、オーガナイズド・ノイズのスリーピー・ブラウン、ルーシー・パールで繋がったラファエル・サディーク、旧知のダラス・オースティン、そしてジョイ自身。これが、ナスティーで変態的なファンク・アルバムとなっていて、非常に素晴らしい。その黒々とブッとくヘヴィーなファンク・サウンドは、Pファンクからの影響の大きさも窺わせるが、ダーティー・サウスの泥臭さもしっかりと嗅ぎ取れる。

スリーピーのプロデュースは2曲のみと少な目だが、もちろんオーガナイズド・ノイズの面々が演奏しており、ここでもあの中毒性の強いファンク・サウンドを聴かせてくれる。「It's Your Life」は細切れのギター・ループが妙にクセになる粘着ファンクで、ジョイがスライ「Runnin' Away」のフレーズを歌う。タイトルからしてイヤラシい「Lick」は、金属的なビートにジョイとスリーピーのヴォーカルが猥雑なムードを醸す超強力なヘヴィー・スロー・ファンク。

ラファエルのプロデュース曲は、基本的にベースとギターはラファエル、ドラム・プログラミングはジェイク&ファットマン(コ・プロデュースも)、キーボードはケルヴィン・ウッテンという面子。どの曲もグルーヴが凄まじくヘヴィーにウネっていて、特にラファエルのベースが堪らない。「17” Of Snow」は重いビートに太いベースが絡むミッド・ファンク。「What If Kissed You Right Now?」はズッシリ重たいグルーヴが地を這うスロー・ファンク・チューン。「You're A Whore」もまた骨太なベースを軸にグルーヴするファンク。「Jefferson St. Joe」は前年に他界した、NFLプレイヤーだったジョイの父に捧げた曲で、リズム・ボックスっぽい太いビートを淡々と刻むトラックに、ジョイの熱い歌唱が響く。

ダラス・オースティンがプロデュースした「Techno Pimp」は、まさにタイトルどおりのテクノでピンピンでコズミックなエレクトロ・ファンクで、アウトキャストの『Stankonia』に入っていそうな曲だ。同じくダラス・プロデュースの「Missing You」では多くの楽器をヴァン・ハントが演奏している。ハントとジョイはかなり相性良さそうな気がするのだが、どうせならハントのプロデュース曲も聴いてみたいところ。
1曲だけ、アンドレ・ベッツなる人物がプロデュースした「Get On」は、チキチキいってるビートがグルーヴィーに走る曲で、キーボードを弾いているのはディンキー・ビンガム。

残りはジョイのセルフ・プロデュース曲。「Crave」はシンプルな打ち込みビートにタフなファンクネスが宿る。ブーツィーズ・ラバー・バンドのズルムケ官能ファンク・バラード「Munchies For Your Love」のカバーは、ラファエルのブーツィーに負けず劣らずの極太ベースがドクドクと脈打ち、ジョイと夫でグッディ・モブのメンバーのビッグ・ギップが妖艶に絡む。
生ドラムでファンクする「I'm A Woman」はルーファスのカバーで( 『Rufusized』収録)、ジョイのヴォーカルもチャカ風。ここでのベースはデブラ・キリングスで、キーボードはダラス。「Nicole」はヘヴィーな歌詞を支えるトラックもまた重い。ラストの「Keypsiia, Age 4」は、4歳になる愛娘キープサイアがギターを掻き鳴らし歌う可愛らしい曲。

この大傑作をもって、ベティー・デイヴィス以来永らく空位となっていたファンク女王の座に就いたジョイだが、続く4thアルバム『Tennessee Slim Is The Bomb』も素晴らしい内容ながら、自主レーベルゆえ流通はごく一部に限られてしまった模様。つくづく不運な人だが、そういった苦難と闘い続けたキャリアもベティーと重なるものがある。