every shade of love
Every Shade Of Love / Jesse Johnson
 A&M '88 

ジェシー・ジョンソンはプリンスに似ているという理由だけでザ・タイムのオーディションに合格したらしく、プリンスはジェシーのギター・プレイさえも聴かずに採用を決めたのだとか。そもそもが、ヴォーカルのモーリス・デイ以外はプリンスが制作を一手に引き受ける覆面バンドとして企画されたタイムの成り立ちからして、メンバーの技量などは重要ではなかったのだろう。

しかしながら、そんなバンドに集まってきたのは、ジェシーやジャム&ルイスをはじめ、才能も野心もあるミュージシャンたち。彼らがプリンスの傀儡のままで満足出来るハズもない。そのフラストレーションの捌け口を彼らはライヴに求めただろうことは想像に難くなく、タイムは時にプリンスをも喰うエネルギッシュで熱いステージを繰り広げたという。
ジャム&ルイス脱退後にリリースされた3rdアルバム『Ice Cream Castle』では、ジェシーが作曲しギターも弾いた(それ以外の楽器はプリンス)「Jungle Love」が収録された。シングル・カットされたこの曲は『Purple Rain』の余勢をかってヒットを記録したが、ジェシーや他のメンバーたちのガス抜きにはならず、タイムはあえなく解散。

バンド解散後、当然のようにソロ・アーティストへと転身したジェシーは、創作の自由を謳歌したに違いない。しかし、プリンスの関与を一切排除して80年代後半に制作した3枚のソロ・アルバムは、音楽的にもヴィジュアル的にもプリンスの呪縛から逃れられてはいない。むしろ、1stアルバム『Jesse johnson's Revue』や2nd『Shockadelica』のジャケット、アートワークを見ると、ジェシーはすすんでプリンス・フォロワー的なイメージを打ち出しているようにさえ思える(あるいは、レーベル側の意向か)。

3rdアルバムとなる本作『Every Shade Of Love』も、ジャケット及び内容ともプリンスの影響は隠しきれないが、アルバムのリリースを重ねるごとに徐々に顕わになってきたジェシーの個性は、本作でかなり明確になってきたように感じる。
前作は裏ジャケに写っていた9人のメンバーをバンドとして起用していたが、本作はサックスのエディーM、ドラムスのジョン・パリスの他は、基本的にジェシーがすべての楽器を演奏しマルチ・プレイヤーぶりを発揮している(1曲のみジェフ・ローバーがクラヴィネットをプレイしている)。

アルバムのオープニング・トラックの「Love Struck」はソリッドなビートを叩きつけるファンク・チューンで、途中でカミール風のヴォーカルも聴かれる。ハードに唸りを上げるギター・ソロは流石のカッコよさ。
「So Misunderstood」は初っ端からジェシーのギターが炸裂するファンキーなブラック・ロック。「I'm The One」も重いビートを打ちつけるハードなファンク・ナンバーで、このアタマ3曲のファンク・チューンは非常に強力だ。「Color Shock」はその3曲と比べるとやや弱いが、これもビートを強調したファンク。

アルバム・タイトル曲の「Every Shade Of Love」はエディーMのサックスをフィーチャーしたポップ・テイストの曲。ポップでエレクトリックなファンクの「Everybody Wants Somebody To Love」、麗しいギター・リフのR&Bスロウ「I'm Just Wanting You」、ラストの「Stop-Look-Listen」は『Dirty Mind』タイムの1stアルバムのようなエレクトロ・ポップなサウンドで、これはやや時代錯誤な感は否めないが、アルバム・トータルとしては80年代のジェシーの最高傑作だと思う。