spank your blank blank
Spank Your Blank Blank / Morris Jefferson
 Parachute '78 

モリス・ジェファーソンはシカゴ出身のシンガー。
1994年にPヴァインから出た、この人の80年前後の音源を集めた未発表曲集『Rock You』が、タフなファンクを演りつつもシカゴ・マナー薫るなかなか良い内容で気に入っているのだが、正式にリリースされたアルバムは78年の本作『Spank Your Blank Blank』の1枚のみの模様。
スパンクという男女1組で踊るダンス・スタイルが当時流行していたようで、コレはそれに便乗した作品。LPにはダンス・ステップの写真付き解説書が付属しているので、これなら誰でもこのレコードを流しながらスパンクを踊ることができる(かも?)。また、収録の全7曲すべてのタイトルにSpankという単語が使われているなど、アルバムのコンセプトが徹底されている。

プロデュースとアレンジを担うジャーリン・シェルトンとモーリス・コマンダー(キーボードも)、ベースのチャールズ・ビードル、バック・ヴォーカルに名を連ねるジャーリンの姉妹のシャーリーンの4人は、同郷シカゴのファンク・バンド、ロイヤル・フラッシュのメンバーだ。
80年に唯一のアルバム『Hot Spot』をリリースしているロイヤル・フラッシュは、4人中プレイヤーは2人だけなのでバンドというよりはプロジェクト的なものなのかもしれないが、その『Hot Spot』はチープながらも異様にドス黒く迫力のあるヘヴィー・ファンクが最高な作品だった。この4人以外にも、『Hot Spot』に参加したサポート・ミュージシャンたちの多くが本作でも演奏している(本作のドラムスはシカゴの名手、ドネル・ヘイゲンが務めている)。
斯様に、本作はロイヤル・フラッシュ『Hot Spot』のチームによる前哨戦のような作品。同様に、やはり同じシカゴのグループであるヘヴン&アースの76年1st『I Can't Seem Forget Ypu』やネクスト・ムーヴメントの80年作といったクラレンス・ジョンソン絡みの作品で、彼らのクレジットを見かけることができるし、おそらく前述の『Rock You』にも彼らロイヤル・フラッシュの面々が関わっているのだろう。

本作は『Hot Spot』ほどのヘヴィーさは求め得ないが、全曲踊れるディスコ・ファンク・アルバムで十分に楽しめる。モリスはシンガーとしてもなかなか魅力的な人で、屈強なグルーヴと対等以上に渡り合っている。
アルバムのオープニング・ナンバー「To Spank With Love」は、哀愁のディスコ・ファンク・ナンバー。「Dr. Spank」はゴリッとした質感のゴツいブギー・ファンク・チューン。「Spank A Little Bit」はガヤ入りでナスティーなムードがプンプンのルーズなブギー・ファンク。
「Spank It Child Please」はギター・リフがカッコいいグルーヴィーなディスコ・ファンク。軽快なアルバム・タイトル曲の「Spank Your Blank Blank」、JB「There Was A Time」のディスコ・ファンク・ヴァージョンみたいな「Spank Your Thing」、ラストの「A Spanking Good Time」はギターがグルーヴィーなラインを象るファンク・ダンサー。