tighten in up
Tighten It Up / Spunk
 Gold Coast '81 

胸元も露わなセクシーなレオタード姿で、悩ましい表情を浮かべながら汗だくで大胸筋を鍛える美女、というジャケットがあまりに強烈なインパクトを植えつける本作。エロいと言うよりも何だか笑えるジャケットだが、裏ジャケは上半身裸のこの女性がダンベルを両手に下げたバックショットで、エロジャケとしてはそちらの方が好み。

スパンクは、本作『Tighten It Up』1枚のみを残すグループ。
このグループは実質的に、ジェシー・ボイス、ジミー・レヴィン、リッチ・テューフォの3人によるプロジェクト。
ジェシー・ボイスはモーゼス・ディラードとのコンビで、プレリュード・レーベルのビル・ブランドンやロレイン・ジョンソンなどの作品のプロデューサーとして有名な人物。ジミー・レヴィンもプロデューサーやライターとして活躍した人のよう。リッチ・テューフォはカーティス・メイフィールドの腹心としてカートムの作品に数多く携わったアレンジャー。

すでに実績十分のこの3人は、それぞれの頭文字を取って名付けられたBLTなるプロデュース・チームを結成。このチームでの活動は80年代初めの僅かな時期のみのようだが、本作と同じくシカゴのマイナー・レーベル、ゴールド・コーストからリリースされたトゥデイ・トゥモロウ・フォーエヴァーの『Surprise! Surprise!』もこのBLTの3人の制作、すなわちスパンクと同じプロジェクトと捉えてよさそう。

3人のなかでもおそらくイニシアティヴを握っていたのがジェシー・ボイスと思われる。本作のプロデュースとアレンジはBLTの3人だが、全8曲中6曲のソングライトをジェシーが手がける(共作含む)。他の2人は基本的には鍵盤奏者だが、ジェシーはギターにベース、リード・ヴォーカルも務める。
アルバムの内容としては、重たいファンク・サウンドを中心に、バラードやメロウ・ナンバーもあり、80年代ファンク・アルバムとしては非常に高水準。レコーディングはカートム・スタジオで行われ、ミキシングはシカゴ・ハウスの重鎮フランキー・ナックルズが担当。

アルバム冒頭の「Get What You Want」はミドル・テンポでゴリゴリ迫るヘヴィー・ファンク。ラップ調のヴォーカルや、ブーツィー十八番の"Wind Me Up!"みたいなフレーズも入り、Pファンクからの影響をアリアリと感じさせる。軽快なライト・ファンクの「Hot Flashes」、女声コーラスを従えたバラード曲「Love Looks Good On You」、「Crazy Me」はクールなアーバン・ファンク・ナンバー。

アルバム・タイトル曲の「Tighten It Up」は、ゴツいビートが転がりクラップがビシバシキマるファンク・チューン。「A Friend Ain't A Friend」は、冒頭の喋くりから"WEFUNK"というフレーズも聴こえるこれもPファンクっぽいナンバーで、フレッド・ウェズリー風のトロンボーン・ソロも挟んで展開するブギー・ファンク・チューン。「Expose Yourself」は重いベースがグルーヴィーに脈打つファンク・ダンサー。ラストの「La Bimini」は女性コーラスをフィーチャーした黄昏メロウ・チューンで気持ちイイことこの上なし。