love and conversation
Love And Conversation / J.R. Bailey
 United Artists '77 

ドゥーワップ・グループからキャリアをスタートし、70年代にはシンガー/ソングライターとして活動したJRベイリー。
やはり作曲家としての印象が強い人で、代表作は何と言ってもダニー・ハサウェイが『Extension Of A Man』で取り上げた名曲「Love, Love, Love」だが、他にも当ブログで取り上げたものでは、4人組ヴォーカル・グループ、リフレクションズの『Love On Delivery』の半数近くの曲を作曲(とアルバム全体のプロデュースも)など、ソングライターとしての才能は疑う余地がない。
一方で、シンガーとしてはそれほど魅力的とは言えないというのが正直なところか。伸びの良いテナーだが、朗々とした歌い口のバラディアー・スタイルは好みの分かれるところ。

「Love, Love, Love」の作者ヴァージョンを含む74年リリースのソロとしての1stアルバム『Just Me 'N You』は、その『What's Going On』まんまなニューソウル・メロウなサウンドが抗い難い気持ちよさの70年代ソウル名盤。マイク・ジェイムス・カークランド『Hang On In There』やウィリアム・ディヴォーン『Be Thankful For What You Got』などと同様に、時代の空気をダイレクトに反映したような作品だったが、ニューソウルもとっくに終わった77年にリリースされた2ndアルバム(にして最後の作品)となる本作『Love And Conversation』はどうか。

白いジャケットに黒のシャツで胸元をはだけ、左胸に紅い花を挿したムサいオジサン、というジャケットが物語るように、本作はベイリーが女性への愛を歌う作品。まさにLove And Conversation。時代柄ディスコなリズムのダンス・ナンバーもあるが、アルバムの核を為すのはメロウなバラード曲。ソウルフルというよりはジャジーなムードも漂うそれらの曲では、気持ちよさそうに朗々と歌うベイリーのバラディアー体質もより露わになっており、この手の曲は個人的には余り面白いとは思わないのだが、一方で無視できない良曲もあるのは事実。
総じて、前作と比較してはだいぶ分が悪いが、70年代後半のメロウ・ソウルが好きなら聴いて損はない作品。

アルバムのオープナーとなる「A Taste Of Honey」はストリングスが舞うディスコ調の流麗なダンス・ナンバー。メロメロにメロウなジャジー・バラード「Breaking Up Is Hard To Do」、乾いたパーカッションが小気味よいリズムを刻むディスコ・ナンバー「The Coming Of Your Love」、アルバム・タイトル曲「Love And Conversation」はムーディーなスロウ。
アーバンでジェントルなスロウ・ナンバー「Alone In The Morning(Prelude Of Stella)」、旋回するストリングスを纏ったミディアム・メロウ・グルーヴ「Stella By Starlight」、軽やかにステップするシャッフル・ナンバー「Live Love And Play」、「A Million To One」もお得意の朗々としたバラード。
アルバムの最後を飾る「That's Love」はメロウ・グルーヴィーなミディアム・ダンサーで、これは本作中では出色の出来。このタイプのこのクオリティーの曲がもうあと1~2曲あれば、本作の評価も随分と変わっていただろう。