caravan of love
Caravan Of Love / Isley Jasper Isley
 Epic '85 

アイズレー・ブラザーズは1982年の『Between The Sheets』を最後に、アーニー・アイズレー、マーヴィン・アイズレー、クリス・ジャスパーの年少組3人が脱退。ヴォーカル・グループの年長組に対し、ほとんどの楽器演奏はもちろん、作曲やアレンジについてもその多くを担っていたと思われる年少組だが、グループへの貢献度の大きさに比して、十分な評価や待遇を得られていないことに不満を募らせていたのだろう。若い3人はメキメキ腕を上げ自信をつけていく一方、年長組(の中でもコーラス担当の長兄2人か)への鬱憤がついに爆発し、アイズレー・ジャスパー・アイズレーとして自分たちだけでやっていく決意を固めたのだった。
この脱退劇を主導したのはクリス・ジャスパーだろう。グループの中でも取り分け才能に恵まれ、1人だけ血を分けた兄弟ではない(次兄ルドルフの妻の弟の)クリスが、他の2人以上に鬱積したものがあったとしてもおかしくない。

斯様に、83年を境にアイズレー・ブラザーズは年長組と年少組に分裂し、10年に及んだ3+3体制は敢えなく終焉。
ここで気になるのは、アイズレーの自主レーベルであったT-NeckをディストリビュートしていたCBSの動き。CBSはグループを出て行った方であるアイズレー・ジャスパー・アイズレーとサインし(リリースは傘下のエピック)、母体であるアイズレー・ブラザーズとの契約を切り、T-Neckは消滅する(ロナルド達はワーナーへと移籍)。これははたして、クリス達がCBSを相手に上手く立ち回ったのか、それともCBSがクリス達を唆し影で分裂劇の糸を引いたのか。アイズレーとCBSとの間には契約上の揉め事もあったようなので、CBSはグループのビジネス面を牛耳る長兄3人を追い出したかったのかもしれない。

実質的には内紛に勝利したカタチのアイズレー・ジャスパー・アイズレーだが、以降は3枚のアルバムをリリースしたものの80年代末には解散してしまう。片や本家アイズレー・ブラザーズの方は、86年に長兄ケリーが亡くなり、次兄ルドルフも80年代末には業界から引退。1人残ったロナルドを当時の妻、アンジェラ・ウィンブッシュがバックアップする体制へと移行するが、90年代に入るとアーニーとマーヴィンがロナルドに頭を下げてアイズレー・ブラザーズへと再合流を果たす。一方で、(長兄2人が去った後にも関わらず)クリスのグループへの復帰は叶わなかったことを見ると(本人の意志かもしれないが)、アイズレー家とクリスの間に横たわる深い確執を感じざるをえない。

アイズレー・ジャスパー・アイズレーがリリースした3枚のうち、おそらく最も良い内容だと思われるのが2ndアルバムの本作『Caravan Of Love』。
作曲とプロデュースは全曲3人の連名、演奏もすべて3人だけで担うセルフ・コンテインドぶりはアイズレー時代から変わらず、リード・ヴォーカルはクリスとアーニーが分け合うカタチ。作曲も演奏も歌もすべて自分たちだけで出来るということは彼らの矜持であったろうし、歌うだけの長兄3人に対する強烈なアンチテーゼでもあっただろう。
80年代半ばという時代的なこともあり、ファンクやアップ系の曲は今の耳にはスパイシー過ぎてキツい部分があるのは否めないが、そういった曲はそんなに多くはなく、メロウなミディアム/スロウ系楽曲を中心に構成されているため聴きやすい。アイズレーのメロウ・サイドを司ったクリスのセンスが十分に発揮された作品と言えそうだが、一方でアーニーのギターにフォーカスが当たることがほとんどないというのは寂しいところ。

本作において最大の目玉曲と言えるのがアルバム・タイトル曲「Caravan Of Love」で、これはR&Bチャート1位を記録した彼ら最大のヒット曲。クリスがリード・ヴォーカルを取り、往年のメロウ・アイズレーを彷彿とさせるギターやキーボードのリフレインに彩られたスロウ・ジャム。
しかし個人的に最も気に入っているのは「Insatiable Woman」。メロウな浮遊感を湛えたミディアム・スロウ・ナンバーで、煌めくシンセサイザー/キーボード・サウンドはもちろん、意外やクリスのヴォーカルも結構イイ。DJ MUROのミックス・テープ『Diggin' Ice '96』で初めて聴いた思い出深き1曲。これもクリスがリードを取るミディアムの「I Can Hardly Wait」もまずまず。

他では、マーヴィンのベースがグルーヴィーな「Liberation」、クールなミディアム・チューンの「If You Believe In Love」あたりは聴ける。デジタル・ビートで突き進むアッパーな「Dancin' Around The World」はちょっと厳しいか。これら3曲でリード・ヴォーカルを取るのはアーニーだが、シンガーとしての力量はクリスよりは落ちる。疑似ライヴ仕立てのファンク「High Heel Syndrome」はクリスとアーニーが2人で歌うが、ロナルドが歌っていたらきっとカッコいいファンクに仕上がっていたに違いない。